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リリー47 (十七歳)

 


  国王に意見して、親が呼び出されて、不敬罪で街から出るなって軟禁された私は、せめて仲間たちの足を引っ張らないように、家でひっそりと過ごしていた。


  だけどね、上の兄がセオさんが境会の仲間だって疑って、それに皆も同調している今日この頃。


  なんとか、そこに意見したい。


  でも下の兄が珍しくセオさんを庇っても、ぜんぜん聞く耳持たなかった上の兄。


  (私なんかの意見なんか、挙手したって無視されるよね…)


  国王に意見してこのザマなのに、上の兄に、セオさんの何を言えるの?


  そう思ってもんもんとしていたら、また学院がガランガランって鐘を鳴らして煩く騒ぎだした。


  最近、たまに鳴るんだよね。防災訓練かってくらい、街中に響き渡るガランガラン。


  皆は別に気になりませんよって顔で無視してるから、都会では当たり前のガランガランなのかと、私も知ったかぶりしていたけれど、これは使えるんじゃないって閃いた。


  お兄様にステイルームを言われたら、「あのうるさい音が気になるの」って、今さらそれ聞く? 作戦。そのまま流れるように、セオさんの話をしてみよう。


  グレイお兄様が領地に戻る前のワンチャンス。決行し、会議室にさりげなくお邪魔してみました。


  (わ……)


  そしたらそこは、思っていたよりピリピリキリキリ職員たちが動き回り、書類を運んだり、地図を広げたり、伝令鳥たちも順番待ちしてお手紙渡されるのを留まり木で待っている。


  (やばいな……)


  騎士制服の職員の間、場違いなドレス姿でお邪魔します…。せめて学院制服来ていたら、こんなに浮いてなかったのに…。


  何しに来たの? って、皆の視線。


  でも彼らは、チラッチラッって通りすがりに私を見てるけど、兄貴の手前、先に「邪魔だよ」ってズバッと言う人はまだいない。


  ピリピリ、キビキビ、ギスギス、ジロジロ。


  ようやく見えたエレクトくんの姿。ほっと一息もつかの間、会議室の中枢は、職員達が動き回る以上の緊張感が漂っていた。


  (やべー所、来ちゃったな……)


  皆さんいつもとは違う。人を殺しそうな雰囲気のメイヴァーさんに、騎士服で厳しい顔したフィオラちゃん。ナーラさんは私と同じくドレス姿なのに、この場に全然浮いていない。むしろあのドレス姿で、今すぐ戦えますよって顔してる。


  あ、ファンくん発見。今度こそ仲間を見つけたと思ったら、ファンくん……。


  (オー…ノー……)


  ルールさん、私と同じく浮いてる子供、ファンくんに睨みを利かせて泣かせてるんじゃないの?


  震えてるよ、ファンくん……。


  忘れてたよ、ここが悪の中枢の予備軍だったって事。


  しかもその中心に座るのはメルヴィウスで、上の兄貴はもう居なかった。


  「……そういえば居たな、エンヴィー・エクリプスだったか? リリーにおかしな事をした…」


  「エクリプスって、あの教師の話?」

 

  ここまで来て、今さら引くに引けないよ。自然に会話に紛れ込む。そして自然にエレクトくんのお隣に並んでみましたが、青いドレスでのこのこと現れた私を、はあ? って顔して皆は見た。


  ナーラさんが、真顔で私の排除に動き出す。


  「だって何だか、とっても騒がしいから。気になるじゃない」


  「……今は仕方がない」


  「学院で、何か大きな行事でもあるの?」


  「え??」


  あの鐘の音がうるさいよね? 作戦は、メルヴィウスにスルーされた。だから隣のエレクトくんにも聞いてみたけれど、気まずく後ろに一歩下がった。


  あかん。失敗や。この場では、セオさんの話なんて、出したらあかん。


  「邪魔だ。部屋に戻れ」


  ミートゥーミートゥー。


  賛成です。戻ります。


  なので同じく場違いなファンくんの救出に来たということで、この場は撤退…まてよ。


  エクリプスって、アニメか漫画が映画で見たことある。


  私と同じく悪役の名前に居たような、居なかったような……。


  そんな曖昧な発言したら、意外にも皆が食いついて、いやいや過去世のネタをこんなピリピリな場所で披露するの? って、それこそ引くに引けなくて、追い詰められて知識をなんとか絞り出したら、ポロッとこぼれ出たよね。


  『日蝕? 月蝕?』


  スンッて部屋の音が消えたのは、私の言葉が聞こえなかったっていつものクレーム。


  まあ取りあえず、その後は何とか説明して、物知りなルールさんが引き継いでやれやれと思っていたら、続いた境会のエンヴィーの話、彼の虐待疑惑に過去世のあの子を思い出した。

 


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