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  「思っていたよりも、早い展開だ」


  東沿岸を船から眺めたオルガンは、山脈の狼煙を確認し呟いた。


  「砂漠の連中もそうだが、厳しい山岳地帯に住む者たちは、肥沃な大地を常に虎視眈々と狙っている」


  「次代、総帥からです」


  今は穏やかな波に揺られる客船、渡された手紙を広げたオルガンは内容を確認すると顎に手をあてた。


  「親父殿は、アーナスターを心配しているな」


  「ギルドは、弟さんを西の戦線に配置するそうですね」


  「そう。(あれ)は西との交易がある。私は東トイ国と。ナイトグランド(我ら)は常に、中庸に、お客様を選ばずに商売しているからな。だが」


  組んだ腕、軽く顎を支える指、オルガンは困ったものだとため息した。


  「可愛い弟は昔から、欲しいものが見つかると視野が極端に狭くなっていけない。きっと今、アーナスターは右側(ダナー)に偏りすぎている。それを親父殿が気にしてるんだが、さて、手を貸すべきか……」


  「我々もトイ国は片手間に出来ません。あそこの王子、次代の恩人を本格的に狙ってますよ。西のバックスでも、その噂話が聞けるそうです」


  「秘されたものには注目が集まってしまう。戦利品として、美しいお姫様の略奪は良い行事だ」


  ステイ大公領に、長年隠されてきた美しい令嬢の噂は、商人や詩人を介して暇な貴族、他国の王族の間に知れ渡る。

 

  「秘された宝ってところが、なおさら興味が沸きますよね」


  「宝、ね」


  口を開かなければ氷の人形の様に美しい見た目。


  弟を妹と思い違い、自分を睨んでいた蒼い瞳を思い出してオルガンはフフッと笑ったが、視線を移したスクラローサ上空、雲の切れ間に見えた赤色の矛を見た。


  この争いの引き金。


  砂漠化が進む西のバックス国、寒冷地が広がる東のトイ国。続く各国の自然災害は、百年より前、スクラローサが結界を張り巡らせた後に顕著にあらわれていると、南のダエリア諸島の学者は見ている。


  何かに、歪められている。


  オルガンは、不自然に空に突き刺さる赤色の矛に、金色の瞳を眇めた。



 **



  「境会(アンセーマ)と聖女は、いつの時代も、よく我がスクラローサを護ってくれている」


  王宮の謁見の間、豪奢な椅子に腰かける国王は、跪く赤色の外套を纏う祭司を労った。

 

  「迫る北国セントーラとの戦争、それに間に合うように結界を強化してくれた事、境会(アンセーマ)の貢献を大いに評価しよう」


  「有り難き幸せ。国王陛下、全ての祝福を感謝致します」


  謁見の間を退出した祭司オーカンとクラウンは、窓から赤色の光を見上げた。


  「次々と触媒石が右側(ダナー)に破壊され、新しい献上品も作れず、一事はどうなることかと思いましたが、今までになく結界が強まりましたね」


  「私が子供の頃に見た矛より赤く強い。確かに、初めて見る強さだな」


  老いたオーカンも見たことが無い強い魔方陣、三叉の矛の全身は、天に穴を空ける様に煌々と輝く。


  「文献には、この世に貢献した異物が役目を終え国を支える柱となった時に、結界の力が更新されて強まるとあったのだが、異物は召喚したばかりで、まだ王太子を操る事も出来ていないが…」


  「主祭司様!」


  王宮の廊下から境会の聖堂にたどり着くと、年若い灰色の外套の祭司が走りよってくる。


  「祭司デオス、どうされましたか?」


  「また、オーが、フェアリオが居なくなりました!」


  「馬鹿な、今度の異物は外には出さず、近場で管理していたはずですよね?」


  度重なる異物の紛失に、境会はフェアリオの行動範囲を制限していた。王太子の執務室と学院、境会のごく一部のみの異物の動線。


  「迷って、学院内に居るのではないですか?」

 

  「それが隈無く探しましたが、食事時にも自室にも現れず、聖女と思われる人物が、男と二人で歩いていたと庶民の生徒(スクラディア)の証言もあり」


  好みの者の姿に変容する異物は、良くも悪くも人の目をひく。更にそれは貴族ではなく深緑色の制服(スクラディア)を身に纏い、男と歩いていればなおさら。


  「あれほど王太子の元へ通っていたのに、他の男に声を掛けられれば直ぐに付いていくとは……、やはり異物フェアリオも、使えないただの女ということか」


  珍しくクラウンが怒りに震えたが、そこに更なる凶報は飛び込んだ。


  「大変です!! 主祭司様!!」


  「今度は何だ!!」


  「保管していた(ネル)が、全て、全て失くなっています!!」



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