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リリー1 (誕生~)

 


  ジタジタ、バタバタバタ。


 『わぁーん、あーん、あーん、…ギャーッ!』


 何かの違和感に不満が爆発しても、全力で四肢をばたつかせ大暴れしても、私は虐待されなかった。


 (ここまでやっても大丈夫…)


 見慣れない高い天井を眺めながら、我がままのボーダーラインを考える。そしてまた、実行してみる。


 『あーん、わーん、わーん、…ム、ギャーッ!!』


 お尻のむれむれ具合、お腹のぐうぐう具合、お(ねむ)のぐずぐず具合に衝動不明のムズムズ具合、そして原因不明のイライラ具合。


 爆・発。


 ーー誰か来いやぁー!!

 『ウ・ギャーーーン!!』


「よしよし、今日は一段と寂しがり屋さんだね」


 銀髪、蒼い目の少し大きめがやって来た。


 あうう、えぐえぐと我がままの止まらない私をよいしょっと持ち上げると、ぽんぽんと背中を軽く叩く。


「今日はお歌を歌おうか」


 少し大きめの後から、慌てていつもの係員がやって来る。係員は白髪に金目、大きめ兄と同じくらいの大きさ。だけど係員がそばに来ると、少し大きめが首を横に振った。すると係員は一礼して去って行ってしまった。


「ーー、ーーー、ーーー、」


 少し大きめは、聞いたことのない鼻歌ソングを私の耳元で歌ってくれる。この聞き慣れないふんふーんを聞くと、私はいつの間にか眠ってしまう。



 そしてまた始まる。



 『ブギャア!ウギャアッ!う、わーーーーん!!』


「めっ!めっ!よいこは、ないちゃだめっ!」


 銀髪、碧い目、少し小さめがやって来た。


 小さめは何かの台を持ってくると、私の落下防止柵をよいしょと乗り越える。


「よしよし、よしよし、なかないの、なかないの」


 小さめの背後にはいつもの係員が立っているが、私の寝室に忍び込んだ小さめを、なんだか温かい目で見つめてた。


 ここで私の中のイライラが騒ぎ出す。


 ーーえいっ!


 ペチッ!「あっ!」


 ーーえいえいっ!


 けりけりっ!「やっ!」


 やってやった。すっきり。


「うええっ、いたいよぅ、」


 あ、ごめん、そんなに痛かった?


 でもそれは心の中でだけ。寝転がる私は謝罪もせずに指をくわえて見てるだけ。突然のバイオレンスを理不尽にぶつけられた少し小さめは、なにやら係員と話した後、くるりと私に向き合った。


 今度こそ、やられてしまう?


 虐待に目をつむって身を縮めてみたが、少し小さめは私の隣に横になると、顔をつんつん突いてくる。そんなつんつんを繰り返された私は、いつの間にか眠ってしまった。



 そしてまた。



「ギャアアン、わああんっ、ふぇーっ、ふぇーっ、」


「あらあら、今日はなんだか元気が無いわね」

「どれ私が。ん? これは熱が出てないか?」


 銀髪蒼い目の大きめ。黒髪碧い目の女の人。いつもより力の入らない、ぐったりとした私を持ち上げると、慌てて係員が走り出す。そして薬臭いおじさんにあれこれ身体を観察されると、極甘シロップを飲まされた。



 そしてまた…。




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