8話 妹が可愛すぎて、檻の中
8話 妹が可愛すぎて、檻の中
あの後、お父さんは無断でビデオを撮ったことで、私は警察官をビンタしたことで、警察官はるんちゃんのバスケットボールにめり込んだことで、るんちゃんは猥褻物陳列罪で逮捕されたのだ。
「るんちゃんだけ犯罪者臭凄いのだ」
「猥褻物陳列罪って何かしら?」
「えっちなものをみんなに見せた罪なのだ。とりあえず鏡を見るといいのだ」
「ふむふむ。あれ、ここって鏡もないのね」
ここは留置所。私たちは仲良く一つの檻に入っていたのだった。男女分けず身内で固めるのがトレンドらしいのだ。
「本官から提案があります」
すぐ隣にいた警察官が立ち上がり、手を叩いた。
「この檻のリーダーを決めましょう」
「…………」
何を言い出すのだこの警察官は。
「リーダーって、リーダーになれば何か得でもあるのだ?」
「リーダーは、全員から好きなおかずを1種類、嫌いなおかずを1種類交換する権利があるのであります!」
「そんな大富豪みたいなルールがあったのね」
「あるわけないのだ。おかず奪うのはあるみたいだけど」
るんちゃんも結構なおマヌケさんみたいなようだ。痴漢と相殺し切れなかった分で逮捕とか言い出す時点でお察しではあったけれど。
――リーダーとは、一番強い者。
それまで静観(るんちゃんを視姦)していたお父さんに、全員の注目が集まる。
「強さとは、ボケ」
「なるほど、ボケ。というと?」
「弱い者がツッコミ側に、強い者がボケ側に回る。これが自然の摂理。この場で最もボケた者こそ、真の強者と言えるだろう」
「ボーボボなのだ」
お父さん、それはボーボボの世界なのだ。漫画なのだ。しかもギャグ漫画なのだ。
「となると……私には無理だわ」
「いや、現状お父さんと黄金のツートップなのだ」
「ボケ狂え!」
「落ち着くのだお父さん! こんなところでまた馬鹿なことしてたら、本当に罰金くらいは食らってもおかしくないのだ」
「おかずのためなら罰金くらいどうってことない!」
「そのおかずって、盗撮した動画と食事とどちらのことを言っているのだ?」
どちらに転んでも地獄なのだ。
「私は自信ないので、お父様にお任せするわ。お巡りさんも、それでいいわよね?」
「はい、構いません。本官は、ピンクですゆえ、リーダーの資格などありません」
「それってどういうことなの? ピンク……豚とか?」
「刑事施設における性犯罪者の蔑称のことなのだ」
「なるほど。ということは、私もお父様もピンク……ん?」
るんちゃんが私の方を見る。
私がリーダーになったのだ。