膝枕は正義。(例外は除く)
「………はね。………しましたから……ゆ……して……ださい……」
「………だ………!」
まどろみの中で、声のトーンが対象的な二人の女性の声が聞こえる。うるさいな、まだ寝てたいのに。
ごろん、と体勢を変え寝返りを打つと頬に滑らかな肌の感触があたる感じがした。
やけに人肌のように温く、低反発で性能のよい枕だ。意識もはっきりと覚醒しない最中、うとうととそんな事を考えていたら、枕に押し当てている頬とは逆の頬にさらりとした細い毛束が触れ、擽ったさから身をよじった。
……………そもそも、なんで寝てるんだっけ………俺……。
段々と意識が覚醒し、はっと目を見開くとそこには先程顔に強烈な蹴りを食らわせてきた黒髪美女の顔があった。ドアップだ。
「……おはようございます。主」
「お、おはようございます…………?」
なんで膝枕されてるんですかね。しかもものすっごい嫌そうな顔で。
予測不可能な状況の脳内大混乱で、ドクンドクンと鼓動が高くなる。
「……小羽、起きましたよ。……もういいですよね……?」
素っ気なく俺から目を逸らした姉は同意を求めるように妹に顔だけ向けた。
「だ〜〜め!ちゃんとマスターにごめんなさいしたの?するまでそのままだから!」
「……うっ。」
妹強し。
見事に押し黙った。
この姉、妹には激甘で弱いのでは…?
「…無礼な行い、謹んでお詫びします。」
ずもももも。
バックにはいやいやが見て取れるものを纏っている。
視線は見下しモードだ。
「…………こはね」
ぐるんっ。見えない犬耳を垂れさせて、うるうると瞳を潤ませながら再度許可を求める。
その従順さ、こっちにもちょっと分けてくれませんかね?
「うん、よく出来ました!もういーよ、おねえちゃん!」
にこにこと笑顔で駆け寄ってくれば姉の頭をよしよし、と撫でて。
ご満悦に微笑む悪魔がいる。
そしてやっとこさ許可がおりた瞬間、すくっと立ち上がり俺の頭は無惨にも冷たい床に叩き付けられる。
「で!!?」
「主が起きた所で、状況を確認しましょ「「その前に!!」」
突然の割り込みに目をぱちくりとさせる両者。
「自己紹介しなきゃね?」
そう言った天使は小さな両手で俺の手を包み込み、にこっと首を傾けた。
姉がレズ化してしまうのも、なんだか分かった気がした。