ソシャゲなんて
スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム。通称ソシャゲ。若年層を中心に、老若男女幅広い年代で手軽に遊ぶ事が出来る。数多くのソシャゲが配信され、日にあたるものはメディアミックス化までされる。その反面、あたらないものはサービス終了、二度と遊ぶ事は出来なくなるのだ。
嗚呼、二度とやるもんか。
俺が好んでプレイしてたソシャゲ「聖国の騎士」は超超王道RPG。
男女共に美麗なイラストで、まぁゲーム初心者には難しいシビアなゲーム性だったけど、俺を含めたコアなファンにはとても受けた。
しかし、一般層には受けなかったので四年前にサービスが終了し、俺のデータは無となった。
そう、俺は被害者なのだ。
一番初めに初心者歓迎ボーナスで手に入れたRの「騎士兵テル」にはかなり愛着があったので、サービス終了後は暫くご飯も喉を通らなかった。
もうあんな思いはしたくなかった……なのに、何故…!!
「ソシャゲ勝手にインストールしてんだよ!!」
現在、俺達は笹田の家に寄る前にコンビニに来ている。
なんでこんな状況になったんだ。
「…え、あれ、駄目だった?大和、昔ソシャゲ好きだったでしょ。ああ、容量は気にしないで。コンビニのWiFiでデータ容量0だから。」
指で丸を作って、0だからと得意げに言う。
こんなアホそうな行動だってイケメンになるんだから、ほんとイケメンムカツク。
「〜〜っだから、お前何年俺の親友してんだよ!!!ソシャゲは金輪際しないって誓っただろ!テルの前で!」
テルと俺の絆は永遠だ。もう顔とか思い出せないけど!
拳を胸の前でグーの形に固め、前のめりになってしゃくり上げる。
奴は俺の勢いにうぉっと一歩下がると俺の心情を瞬時に察知したのかへにゃと困ったような笑顔を浮かべながらまぁまぁ、とこちらを宥めた。
「テルくんに対する大和の思いは重々承知してますとも。…でもさ、もう四年も経ってるんだよ?新しい恋人(ソシャゲの嫁)作った方がテルくんも喜ぶんじゃないかなー」
奴はぼーっとローディング画面のパーセンテージを見ながら呟く。
その間にも「俺のスマホ返せ!!」と言わんばかりに迫るが、俺の手は虚しく空を切るだけだ。
「ハァー……。」
「大体、嫁ってなんだよ。アニメの嫁だけで十分だろ?」
「大和ってば、Tmitterのあれ…見てないの?」
「Tmitterがなんだって?」
やっとこさ長いローディングが終わったのかスマホが笹田の手から戻ってきた。
「このソシャゲ、現代にリアル召喚できちゃうらしいよ。このゲームの中の美少女を。」
ありえない。