大失恋、そして。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン‥‥。
静まり返った廊下に午後17時を現す学校特有のチャイムが鳴る。
窓からは夕日が差し、暗がりの廊下に佇む二人のシルエットをくっきりと照らしている。
告白には絶好のシチュエーションだ。
「え、えーっと‥あのさ‥‥」
ーー嗚呼、過去の俺。頼むからやめてくれ。
そんな黒歴史は思い出したくないんだ。
告白なんて生まれてこの方15年、初めての経験で。
昨日ギャルゲー片手に徹夜で覚えた臭い台詞も、意中の相手を目の前にすると頭から蒸発して吹き飛んでしまう。歯切れ悪く言い淀んだ後、照れ臭そうに後頭部に回した手で頭を掻き、視線を彷徨わせながら続いての言葉を必死で脳内ウィキペディアで検索しようとした‥‥が、それよりも先に目前の彼女の肉厚で艶ややかしい唇が動いた。
「あのさ。告ろうとしてるとこ悪いんだけど、‥‥帰ってい?」
「へ?」
驚きの余り素っ頓狂な声が出る。
それもそのはず。彼女は誰もが憧れるマドンナなのだ。
容姿端麗、才色兼備、品行方正、学力優秀、運動神経抜群。オタクにだって優しく接してくれる女神様。そんな女神様に告白しようとしていた矢先に、これなのだ。
「つーか、きもいんですけど。まずそのボサ髪、デブ体型にコミュ障。オタク!私に釣り合うとでも思ってるの!?
‥‥。もう卒業だから言うけど、あんた達オタグループに優しくしてたのは私の評価のためだから。じゃ、さようなら。」
悲しいを通り越してもう無だ。
啖呵を切って憑き物でも取れたかのようにすっきりした顔の彼女は、デブオタクの俺にバッと背を向け、颯爽と去っていった。
これが如月大和(15)の黒歴史だ。
オタクなんて、っっオタクなんて‥‥!!
「「やめてやるーー!!」」