暗闇、暗闇、暗闇
「……は?」
瞬間、暗転する。
暗く閉ざされた、世界。
暗闇、暗闇、暗闇
(え、なにこれ怖い)
歪んだ浮遊感。唐突に声を感じた。
───《スキル:我が道を行く》を獲得しました。
(・・・もう、なんでもいいよ...)
理解不能に呑まれ、これほどに自我を保っていることが異常なのだと、啓は理解できない。
常人の要素を備えながら異常。それは、異常が世界に適応したことを示す。しかし、自覚は無い。
常に自然体であるが故に、自らの異常性に気が付くことは、無い。
────それはさながら、無知な赤子が、善悪なき無垢であるが如く。
闇に呑まれた世界に変化はなく、啓にも何ら変化はない。
無変革の鬩ぎ合い、という矛盾。あるいは、根競べか。
停滞した世界。先に根をあげたのは────
『全く、キミは強情だなぁ』
────そのどちらでもなく、存在しないはずの第三者。
即ち、紫乃宮啓の中に巣食うカミの残滓。その、意思だった────。
「強情は、俺にとっては褒め言葉だな」
『いやいや、もっと他に言うことあるでしょ!?』
「例えば?」
『お前は何者だぁー、とか、姿を現せー、とか』
「自意識過剰だな、俺はお前に興味はない!」
『キッパリ言い切った!?』
自分以外には無頓着かつ横柄である。
とてもさっきまで
(え、なにこれ怖い) だの
(・・・もう、なんでもいいよ...) だの
考えていた男とは思えない対応である。
「さっきから騒がしいな。暗いせいで何処に蝿がいるのかも分からん」
『ボク、蝿扱いぃ!?』
「・・・」
『せめて何か言って!?』
「ヤダァー、セルフで漫才してるぅー。・・・ボッチめ」
『セルフじゃないよ!君がボケてんだよ!
アタマおかしいやつみたいに言わないでよ!あとボッチじゃないよ!!!』
哀れ、カミはすでに、啓のペースに乗せられている。
完全にオモチャである。
「そんなに大きな声で、どうされました?あ、交番はあちらです」
『不審者でも犯罪者でもねーよ!』
「おーい、似非ボクっ子ー。語尾乱れてるぞー」
『八ッ!?・・・ボ、ボクはボクだよ、ナニイッテルノ?』
「さっさと要件話せ」
『理不尽スギィ!?はぁ、────とりあえず、一旦停めようか』
姿無き声は、ようやく本題を切り出す。
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