探索
紫乃宮啓は───
「───ぉぉぉぉぉぉ墜ォちるうぅぅぅぅぅーーーーー」
______現在、落下中である。
(風強ぇぇぇぇ!?下ぁぁぁぁぁ!?下、木ぃぃぃぃぃ!
いやマジ危ないってゆうか
死ぬから落ちる落ちる落ちるぅぅぅぅぅ!!!!)
絶賛、混乱中である。
地上3000メートルから落ちたら、誰でもこうなるだろう。
啓は高所恐怖症なので、余計に酷い。
更に悪いことに、落ちる先は森の中。助かる見込みは無いだろう。
・・・もっとも、啓は目を瞑っていて、
それに気が付いてはいないのだが。
ボッフゥゥゥン!!
(痛ぁぁぁあ!?え!?何処此処!?)
A.飛行船の上です。
(腕がぁ!腕がぁぁぁぁ!?)
フィクションみたいに、何処から気球に飛び降りても無傷、なんていうのはありえないのである。
(って、また落ちるぅぅぅぅぅ!!!!)
しかも、気球の上から滑り落ちるのだ、この男。
分厚い革を丁寧になめしたのだろう、いい光沢が出ている。
それでいて革のごつごつした感じがあるのだ。
きっと腕のいい職人によってなめされただろうそれを、啓は滑り落ちてゆく。
気球によって衝撃が殺されていても、まだ地表まで50メートルはある。
常人ならそれでも死ぬ。そして、紫乃宮啓は常人である。
よって、このままでは死ぬ。
墜ちる、墜ちる、墜ちる
────突如、その身体をナニカが覆ったのを感じた。
地表10メートルから徐々にその速度を落とし、地面に接する頃には、その速度はゼロになっていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
(ん?何処だ此処?・・・森の中、か?
陽光差し込む森の中、ふかふかの芝生の上できょろきょろ周りを見渡す俺って・・・)
女だったらヒロイン気分に浸れただろうにと呟きながら身体を起こす。
(っとお!?)
バランスが、取れない。平衡感覚が、おかしい。重力が、小さすぎるのだ。
油断をすれば、重心が持っていかれかねない。木にしがみついてバランスをとる。
(ん?)
木をつたって辺りを動き回り、1時間程たって
重心を馴染ませた啓は、ふと心を引かれるような感覚を覚えた。惹かれた、ではなく引かれた。
まるで、心が肉体存在上の臓器になったかのように、引かれていくのだ。
だがそれは、絶対的な引力ではなく、例えるならば、それはさながら誘蛾灯。
まるで、どこかに導くかのように。
啓はそれに従った。導かれる先にあるのは────
(巨大な・・・搭?────いや、柱か)
空高くそびえ立つは、天を貫かんとする大地の柱。
そして気が付いた。そこに近づくほど、重力が弱まっているのを。
(と、いうことは、コイツが原因か?)
とりあえず、自由人たる啓はそれに触れることにした。
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