膝不屈
シリアスが続きます。ついでに言えば、伏線にも少しばかり触れます。
――――1000PV達成です!ありがとう!
いたのか、俺に。俺の中に、俺以外が。
それは、恐怖。
うなじの辺りで、声がした。幻聴が、聞こえる。それに、言語などないのだろう。
それはただの、意志ある雑音。
其処にあるのは、ただ、俺以外から流れ出した俺の感情。浮遊感。現実味がなくなっていく。地に足が付いていない。現実の重みが、消えていく。現実とのつながり、あるはずだ。何処だ、何処にある。
―――――あった。
手繰る、辿る、我武者羅に。大丈夫、まだ現実だ。まだ、俺は此処にいる。
―――――大丈夫だ、俺はまだ、狂ってはいない。
「恐怖する必要は無い。キミとそれらは、交わることは無い。
ボクは覇界を内的世界と言ったけど、どっちかっていうと、キミが万能である、固有世界、というのが近しいかもしれない。キミが持つ、箱庭。そこではキミは、神の如きチカラを振るえる、というだけの世界さ」
安堵は、無い。ただ漠然と、戻ってこれた、と思うだけ。あれ以上進めば、たとえその言葉があっても戻ってくることは無かっただろうと直感する。其処に見えた虚無にこそ、恐怖する。
自分の思考が、そのじつ、そうでないかもしれないなどと、そんな事実は、受け入れられないだろうから。自分の存在を、思考を。そうでないかもしれないなどと疑い始めれば、その先にあるのは自己の崩壊、破滅だ。存在を保っていられない。究極的に、精神が崩壊し、『死』にさえ容易に至るだろう。これは根源的な恐怖だ。拭い去ることなどできるものか。自分が生涯にわたって築き上げたものが砂上の楼閣、或いは陽炎の如き代物だったと知らされ、膝を屈することなくただ先を見据えるなど、只人にできることでは――――――
そうだ。ただ膝を屈したら、只人にしかなれない。只人でしかない。俺は只人か?
―――否だ。
ならば、もう問題は無い。
未だ力無き瞳には、しかし只ならぬ渇望が蜷局を巻いている。
あぁ、そうだ。俺は覇王だ。
かつて、約定を交わした。盟約を交わした。契約を交わした。
――――――何より、自らに誓った。
ならば、果たそう。履行しよう。彼女との誓いを。
『俺は、覇王であり続ける。もう二度と――――――ように。――――ように』
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