紅き地平、覇道の後方
深紅に染まった森の深部。とはいっても、別に調査隊の血というわけではない。紅く咲く華、間違いなく探していた霊草だ。だが、その霊草は森の深部、霊脈の集う場所に多く自生する珍しいもの。
決してこのように―――――辺り一面になど、咲くはずは、無い。
何かが、おかしい。ここで、ヒトの痕跡は消えている。だが、遺体どころか、血臭すらしない。
・・・違う。今、俺は何を考えた?霊脈の集う場所に自生する傾向がある?それはその霊草が、高純度かつ豊富な魔力によって育つからだ。なら、それは十分条件であって必要条件ではない。必要条件は、そう、高純度かつ豊富な魔力だ。・・・いや、まさかそんな馬鹿な。そんなことがあり得る、とでもいうのだろうか。まさか―――――
「―――人間を魔力に、分解している、というのか」
かつての世界を例にすれば、物質は、それそのものがエネルギーの凝集であるという。この世界において、エネルギーと魔力は同義であると、半ば確信している。俺そのものの構成要素が変わっているのは、自身のことであるからこそ、理解できた。
「・・・ボク、〈魔力〉って言葉、使った覚えないんだけどなぁ。まぁ、いいや。うん、近しいね。キミの回答は、ほとんど正解だ。でも、それは誰もがしていることだ。経験値、と言えば、わかるだろ?霊格値、レベルの上昇っていうのは要するに、敵の魂を魔力に分解し、自らの霊格、器を押し広げることと同義なんだよ」
特にキミの場合は特殊だ、と続ける。
「今ボク、敵の魂を分解する、って言ったよね?まぁつまり、普通は身体は残るわけだ。」
――――でも、キミは違った。
「キミは、覇王スキルを持っていた。スキルが変化したとき、覇界ってヤツが手に入ったでしょ?あれは、敵を一度完全に分解し、キミの内的世界である覇界にて再び存在させるチカラだ。」
だからこそ、呑む・喰らうという表現で示したと、そう言うのだ。
「もう一度、言おう。キミは、覇王だ。立ち塞がる悉くを踏みしめ、その須らくを背負う、その資格を有するものだ」
故に、心せよ。全ての覇王よ。そなたらの歩む覇道。その後方にて踏み越えたものに、足を掬われることなきように、と。
ゆめゆめ忘れるな。それらは、虎視眈々と、その主導権を得んとする者らである、と。
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