冒険者、そして存在位階
ギルド受付で受付嬢を呼び、現れるまで待つ。待つこと数秒、蒼髪ロングの大和撫子然とした人物が、扉の先から姿を見せる。シアナというらしい。らしい、というのは、胸に付けたネームプレートにそう書いてあるためだ。・・・決して、胸を見ようとして偶然目についたというわけではない。
「どのような・・・いえ、冒険者登録でしょうか?」
分かるんだな・・・。いや、分かるか。明らかに挙動不審だもんな、俺たち。
「ヤなこと考えないでよ、マスター・・・」
お前も心を読むな。
「正解だ。冒険者登録を頼む」
「では、こちらの用紙にご記入ください」
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――
記入が終わった。事情が事情なだけにでっち上げが大半だが、クリュ曰く「冒険者ってものすごい数の人が登録してるから、問題行動を起こしたりしない限り身元の調査なんてしないんだ。だから出鱈目でも問題無ーし、ってわけ」ということだ。前科があるだけに信用は一切できないが、シアナが何も追及してこないので問題ないだろう。
「紫乃宮啓、及びクリュトゥスの冒険者申請を受理しました。こちらがギルドカードです。ギルドカードは身分証明書としても使えますので紛失した場合、再発行の手続きは罰金と手数料が課せられ、さらに長期間の拘束が為されます。・・・・ですから、失くしちゃダメですよ?」
事務的な口調で淡々と告げ、最後には少し茶目っ気を含ませて忠告。
・・・間違いない。これまで散々男を誑かして来たのだろう、手慣れている。経験だけでギャップ萌えの境地へとたどり着くとは。―――怖っ、受付嬢こっわ。
まぁ、無我の境地でスルーしよう。
シアナの説明によると、冒険者ランクというものがあり、純粋な実力で定められるものだという。
SSS~Eランクの範囲があるが、実質的にはSランクが最高だそうだ。なんでも、SSランクに至るには精霊王――精神存在、それも世界法則に片足突っ込むレベルの――に匹敵する実力が必要らしい。
物理攻撃で非物理存在と渡り合う、という矛盾を成立させ得る者だけがそこに至れるわけだ。
訳が分からない。
・・・もっとも、Sランクにも古龍を単独討伐するだけの実力が求められるようではあるが。
(あれ?クリュが凍らせた奴って、古龍じゃね?)
―――啓はそこで、深く考えるのをやめた。
「SSSランクについては、その位階に至れば、ただそれだけで現人神として神々の末席に加えられるという話です」
深く考えさせないでくれ・・・、と啓は嘆く。
冒険者ランクは各々のステータスに表示される存在位階と連動するらしい。
(・・・ん?でも、そんな表示なかったような・・・)
シアナの目に入らないように注意しながら、慌ててギルドカードに目を走らせる。あった。
ランクは・・・EX?
Extra―――特別、或いは番外―――か。
これ、もしかしなくても知られたらまずいな・・・。
「大丈夫だよー!ボクも結構ヤバいからぁ!」
黙りなさい。
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