酒場のオッサン、正しくはマスター
今回、クリュトゥスほぼ出番ないです。
あの後、すぐにギルドは見つかった。確かにギルドは見つかった、のだが・・・
「誰も、居ねぇ・・・」
「スッカラカラカラーン、だね・・・」
・・・無人、だった。
いや、正確に言えば無人ではない。ギルド内に併設・・・、否、規模を考えればこちらにギルドが併設されている、というべきな酒場。そこのカウンター裏で店主らしき中年の男が無言でジョッキを磨いている。
―――グラスちゃうんかい・・・。
とりあえず、斜に座り、声を掛ける。
「あんた、少し聞きたいのだが、いいか?」
「んぁ?・・・あぁ、構わん。何だ?」
ジョッキを磨く手を止めず、目だけをこちらに向けて、億劫そうに返す店主。いや、マスター。
「なぜ、これほどまでに人気がない?」
「あー。そりゃ、あれだ。調査に駆り出されてんだ」
「調査?何の?」
「森のに決まってんだろ?上のほうじゃなくても知ってるぜ?
深部の御柱が突然、忽然と消え失せたって話は」
突然、忽然。随分と語呂がいい。覚えておこう。
しかし、だ。この話は十中八九俺たちが関わったものだろう。ならば、話すわけにもいかない。が、急に話を切るのも不審がられる。万が一にも気取られてはならない。となれば、
「いつ頃、受付は開くと思いますか?」
話の流れを、無理のない方向へと流す。
「もう開いてらぁよ。表に居ねぇだけだ」
そう言って、建物の真反対、ギルド側のカウンター、その奥の扉を顎で示す。よく見れば、微かに灯りが漏れている。・・・ならばここに用はない。あちらに行こう。
「そうか、助かった」
「ありがとー!オジサン!」
クリュ、それは思っても言っちゃダメだ。
マスターは気にする様子もなくジョッキ磨きに取り掛かっている。
・・・違うわ。髪撫でてるわ。メッチャ気にしてるわ。
スマン、と心の中で謝罪して、足早に立ち去る。
後日、マスターが23歳と聞き、どれだけ老け顔なのかと驚愕した。
気に入ってもらえたなら、コメント・メッセージ・ブックマーク・評価、よろしくお願いします!