空腹、そして煩悩
雨が、降っている。
毒々しいカエルが五月蝿く鳴く森の中、3日後の二人はーーー
「飯、飯だ…。マトモな飯が食いてぇ…」
「そんなこと言わないでよご主人。余計お腹すいてくるでしょ…」
ーーーーー現在、遭難中である。
そもそも一面森の中なのを確認していながら無計画でそこを歩くというのが間違いなのだ。勿論、その事実には気付いていたものの、クリュトゥスの、
『適当に歩いていても大丈夫さ!なにせボクたち化身は既に概念存在、生物から逸脱しているが故に、食事の必要性は無いからね!』という自信満々な言い切りを信じたせいで、危機と感じることはなかった。
もちろん、クリュトゥス自身の言葉に偽っていた部分は無い。ただ、肉体にとって食事の必要性と空腹に関連は無いのだと思い至らなかっただけだ。
つまるところ、彼らの自業自得である。よって弁解の余地はなく、同情すべき点もない。
・・・一応、先に述べたように彼らは概念存在であるので、そこらへんの土でも腹に詰めておけば空腹は収まるのだが、彼らはそれを選ばなかった。知的生命体として譲れない一線だったのだろう。目的を解決できる手段があるというのに、それの実行を妨げるあたり、本当にプライドというものは面倒くさい。
「誰か、助けを求める美少女とかいねぇかなぁ」
「ご主人が煩悩に呑まれてる…。って、ボクは美少女じゃないの?」
美幼女は美少女に非ず、と啓が薄く嘲笑う。この男にとって、幼女は対象外だ。実に健全なことだ。・・・別に、この3日間で感じた女子力皆無な点で呆れ果てた訳ではない。無いと言ったら無いのだ。
そもそも、啓は煩悩からこの発言をした訳では無かった。
「いや、人がいたら近辺の集落の住人である可能性があるだろうと思ったんだが・・・。男だと、お前に目が眩んで碌でもないことする可能性があるし。んで、どうせなら美少女の方がいいだろぅと思って、な。
・・・お前の方が煩悩に呑まれてねぇ?」
「そ、そんなことないヨ!ボク煩悩とか無いから!!!」
「ヨゴレ系発情美幼女とか、一部のマニアにはタマラナイだろうなっ!!」
「だからぁ!?ボクそんなイロモノ系じゃないって!?」
「あ、はい。ソウデスネ」
「やめてよ、その『わかってますよ』的な目を!!!」
自分で裸ワイシャツになっておきながら発情してないというのは、苦しい言い分である。ヨゴレ系、変態というより、ただの露出狂である。尤も、彼女がそうなったのは啓の深層心理に依るものが大きいのだが・・・
─────まあ、主従揃って碌でもないのは分かりきっていた事ではあるが
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