第26話 狸寝入り
申し訳ありません!
諸事情ありまして今回はかなり短めです!
次回で挽回します!
「みなさんお構いなく、せい……ラルクは私が責任を持って診ておりますから」
「あら、エミリア教官はお忙しいのではなくて? それにラルクは生徒を私に任せると言っていました。ラルクも生徒なので、ここはわたくしが」
「ふふ、ミレア? ラルクは私のこの胸で受け止めたのですが?」
「エミリア教官、それは関係ないのでは……って、な、なぜわたくしの胸を見ているのです?」
「ん、でも胸ならジュエルが一番大きいの。男子はみんな胸の大きな──」
懐かしい温かみを全身に感じた俺は少し前に目を覚ましていた。
おそらくエミルの治癒魔法の効果だろう。
腹の痛みも今はまったく感じない。
手を動かして傷口を確認したいのだが──
なにこれ。
もうとっくに目が覚めてますよって言えないんですけど。
なんかこの狸寝入りの状況、前にもあったような……
薄らとまぶたを開くと、どうやら俺は医務室の寝台に寝かされているようだった。
昨日の朝、ミレアを連れてきた部屋と同じだったため、そのことはすぐに把握できた。
「ラ、ラルク君は僕と最後まで一緒に戦ったんだ、だから、ぼ、僕が面倒を──」
え!? その声は729点! なぜお前までここにいる!
「エミリア教官? それで、ラルクの汗を拭いたその布巾をどうするつもりですか?」
「こ、これは私が責任を持って洗濯を──」
「ん~。怪しいの。そのしまいかた、手慣れた手つきなの。っていうか、やっぱりエミリア様とラルクは知り合いだったの。そんなことだろうと思っていたけどホント、ラルクって何者なの」
「そ、それは僕も知りたいよ! シュヴァリエール公国でも屈指の魔法師の全身全霊の魔法を素手で掴んであの化け物に投げ付けるなんて、そんなことできる魔法師がいるなんて信じられないよ! もう無茶苦茶だよ!」
「ジュエルさん? 729点さん? 国家級の魔法師について余計な詮索はお止めいただけます?」
「ミ、ミレサリアさん! 僕にはフレディアという名前が──」
「ふん、ラルクはたまたまスレイヤに生まれただけなの。それにスレイヤはラルクの強さを認めずに線なしにしたの。そんな国に国家級なんて持て囃されてもラルクはちっとも嬉しくないの。だからラルクはプリメーラに連れていくの」
「ちょ、ちょっとジュエル! 言い過ぎ! 言い過ぎだってば! それにほら! ラルクさんも目が覚めているようですよ!」
ば、ばれてる!?
──パン、パン
「──はい、そのぐらいにしなさい。ラルクからは私が説明を聞きます。他の生徒は中講堂にて待機、教官から指示が出るまで勝手な行動を慎むこと。──いいですね?」
この声は学長か?
この息苦しい状況を打破してくれるのはありがたいが……
しかし……説明っていわれても、どこまで話していいのやら……
「……学長が直接……しょ、承知しました。では私はいったん負傷した生徒の状態を確認してきます。──ラルクになにかあったらすぐにお呼びください」
「……それでは……わたくしも……中講堂に参ります……」
『ち、やばいの、職権的に強敵なの』
『しっ! 早く行くわよ! ジュエル!』
「ラ、ラルク君とは後で僕も話ができますか! 学長! 僕、ラルク君とふたりきりで話したいことが、いえ、話さなければならないことが──」
729点……お前……
そんな性格だったのか……
「──はいはい、いまは早く戻りなさい。すぐに私も中講堂に行って生徒たちに説明しますから」
すると俺の周りからひとり、またひとりと気配が消え──
「さあ、ラルク、もう起きていいわよ?」
「……は、はい……」
「さて──」
最終的に俺と学長ふたりきりになった静かな医務室で、学長からの質問攻めが始まった。