アホか、俺。
「呼ばれてないけど来たぜ」
呼ばれてないなら来るなよ、壊したがり。
「いや、呼ばれることを期待したから来たに決まってんだろ」
期待してたなら呼ばれるまで待ってろよ。
「だが断る。俺様にそんな常識など通用しない」
いや、もはや常識じゃなくて、我慢の問題だと思うんだが?
「知らねーな。俺様が我慢をするとでも?」
怒りやストレスと溜め込むお前が我慢を知らないわけねぇだろ。
「割と我慢はしないほうだが?毎日歌ってるしな」
どうも最近喉の調子が悪いと思ったら、それが原因か!
「昨日も、高い声を練習してたら、喉が痛くて痛くて」
お前のせいか!どうりで喉が痛いわけだ。というか、なんかイガイガしてる気がする。
「それは風邪だろ。マスクしろ、マスク」
黙れ壊したがり。喉まで壊す気か。
「いや、それは流石にないぜ」
いや、あるな。だって、実際に喉が痛いんだからな。
「……貴様、もしかしてでなくとも、アホだろ?」
は?俺のどこがアホだって?
「俺様は壊してないって言ってるのに、壊したがりだからっていう理由で、喉が痛い理由を俺様のせいにする。これをアホと言わずしてなんという?」
いや、喉が痛くなったのはお前のせいだろ。そんなことも忘れるなんて、やっぱりアホはお前だな。
「あ?やるかコラ」
上等だ、表に出ろ。
「精神の中にいるのにどうやって表に出るんだ?アホだろ」
自分同士で戦おうとしてるアホに言われたくないね。
「あ?」
あ?
「今すぐ俺様が主導権を握って暴れてやってもいいんだぜ?」
すぐに拒否されるのがオチだろ。俺は許可が下りてるから問題ないがな。
「一体誰の許可が必要だって?」
隠したがりだが、それがどうした?
「…………」
ハッ……やっぱりアホはお前だな。
「上等だ、表に出ろ」
その言葉、そっくりそのまま返してやる。
「……」
……。
「…………」
…………。
「やめるか。面倒臭くなってきた」
奇遇だな、俺もだ。
「……帰るわ」
ああ、帰れ。このアホ。
「……貴様、次来た時は覚えてろ」
覚えてたらな。
……やっべ、壊したがりと喧嘩とか、俺は何を考えているんだ?
まったく……一番のアホは俺だったな。喧嘩売る相手を間違えるなんてな……。