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4人目 『梅ちゃんがくらくら』



「きゅーじゅ、きゅーじゅいーち」


「ほっ、ほっ」


 夕方の公園に元気な咲ちゃんの声が響きます。

 これは跳んだ回数のカウント。

 そして現在跳んでいるのは、今回のお客さんの紗倉梅ちゃん。


「ひゃーくっ!」


「——っ! …………はふぅ」


 目標回数を超えた梅ちゃんは大きく息をついて、その場にしゃがみこみました。

 汗を流して肩で息をする彼女は、見た目も相まって中学生——いえ、とても健康な女児そのものです。


「お疲れ、梅ちゃん!」


「だ……っから、梅は……はぁ、やめてっ、てば」


「はぅっ」


 満面の笑顔で飲み物を差し出す咲ちゃんに、厳しい目線が向けられます。

 とはいえ、それでも感謝の気持ちはあるのでしょう。


「…………ありがと」


 頰を染めて、お礼を言う梅ちゃん。


 二人はずっと交代で縄跳びを続けていました。

 そのおかげもあって百回も跳べるようになってきたのですが……、


「それじゃ、今度は長縄の練習ね……」


 縄跳びが出来るからと言って、長縄が出来るわけではありません。

 ですから、長縄の練習もしなければならないのです。


「というわけで連れてきたのがこちら、響子さんとゆうさん」


「あら、私が跳ぶのかしら」


「ゆう久々ですから跳べるか不安ですー」


「いや跳ぶのはあたしたちよっ!」


 こうして、長縄の練習が始まったのでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「あー、もう。どうして跳べないのぉ……?」


 練習が始まって約三十分。

 咲ちゃんは何とか跳べるようになりましたが、続けて梅ちゃんが入ろうとすると失敗。ことごとく失敗。

 最初のうちは怒ったりして前向きでしたが、今ではもうこんな状態。


「梅ちゃん、すーって進んでひょい、ぱって感じで飛べば出来るよ! だから頑張ろ!」


「すー、さっ、ひょっじゃないんですかー?」


「なるほど、確かに……」


「いや、分かんないわよっ! 擬音で表すのやめなさい!」


「えー」


「えー、じゃない!」


 しかしそこはゆるゆるな二人が無意識のうちに元気を取り戻させてくれます。


 至って真剣に説明しているのですが、どうも説明は苦手な二人。


「うーん、どうしたら……」


 そんな彼女達を見かねたように、響子さんは言いました。


「————咲ちゃん、私のそばに来てもらえるかしら?」


「ほぇ? うん、よく分かんないけど」


 響子さんに呼ばれ、彼女の隣へ行く咲ちゃん。

 そして、


「梅ちゃん、一人で跳んでもらえますか?」


「梅って言うな! 別に、いいけど……?」


 響子さんがそうさせる意図が分からず、首を傾げる三人。


 ひとまずやってみようということで、大きな縄をくるくる、くるん。


「はいっ、はいっ、はいっ」


 入るタイミングの声かけをする響子さん。

 こうすることで咲ちゃんは跳べるようになったのですが……、


「行くわよ! ————へぶっ」


「あーっ!!」


 勢いよく縄にぶつかっていった梅ちゃんがよく分からない声を出したのと、咲ちゃんが叫んだのはほぼ同時。


「響子さん、これだ! これなんだね?」


「ええ、これです」


「いたた……これって何よぉ」


 地面に座り込む梅ちゃんに、咲ちゃんは言いました。


「目だよ、梅にゃん!」


「にゃんって何よ! 落ち着きなさい!」


 興奮のあまり不思議な間違いをしてしまう咲ちゃん。

 咲ちゃんと響子さんは何かに気づいたようですが、梅ちゃんとゆうさんはまだ気づいていないよう。


「えっとー、つまりどういうことなんですかー?」


「そうよ、全然分からないわ」


「え、ええっとね。梅ちゃんって……目瞑ってるみたいなんだ」


「あー、なるほどー」


「……へ?」


 手をぽんと叩くゆうさんに対して、梅ちゃんは何だかよく分かってない様子。

 なので、


「縄に入る瞬間に、目を瞑ってるからぶつかっちゃうんじゃないかな」


 今度は落ち着いて、しっかりと説明をする咲ちゃん。

 梅ちゃんもこれにはようやく納得がいったみたいで、


「そっか……そうなんだ。無意識に怖がってたのかもしれないわね」


 何度か頷きました。

 けれどそれが分かったからといってすぐにどうにか出来るようなものでもありません。

 梅ちゃんはしゅんとしてしまって、悲しそうな表情を浮かべました。


「————梅ちゃん、一緒に跳ぼう?」


 そこへ、にこっと笑った咲ちゃんが声をかけます。


「何言ってんのよ、あんた」


「手を繋いで、一緒に跳ぼ! そしたら怖くないよ、ねっ?」


「手を繋いで、って……」


 反論したげな表情を浮かべる梅ちゃんですが、にこにことした笑顔を浮かべた咲ちゃんに言葉を返せなくなります。


「やろ! 梅ちゃん!」


「だから梅は……もういいわ」


「え…………」


 諦めたように梅ちゃんは立ち上がり、体についた砂を払って言いました。


「何よ。……その、一緒にやるわよ。あんたが言ったんだから」


 数秒。

 咲ちゃんは彼女の発言の意味を考え、


「————っっ」


 全身で喜びを表しました。

 もちろん満面の笑みで。


「ちょ、何、どうしてそんなに喜んでるのよ……っ!」


 抱きつかれる梅ちゃんも、満更ではないようで。


 それからというもの、最初の数回は当然のように二人揃って縄に当たっていましたが、回数を重ねるごとに慣れていきました。

 そして日が落ちる頃、ようやく二人は揃って跳べるようになったのでした。

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