表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/64

28人目 『祭さんは待つことなく』



 なんかもうあれなお客さん、小松里祭さん。

 彼女はおかわりで淹れてもらったココアを一ごくりで一気に飲み干し、気合を入れて言いました。


「いや、実はですね! 最近忙しくて!」


「そりゃ占いの結果から分かるわよ」


 どうやら咲ちゃんの占いの結果は、実は実話だったようです。


 仕事が忙しく余裕がないので、気分転換をした方が良い。そんな咲ちゃんのココア占いでしたが、


「——実は、ですね」


「もういいから話進めなさいよ」


 梅ちゃんに急かされてもなおキメ顔をする祭さんには、余裕がたっぷりでした。

 彼女は本当に忙しいのでしょうか。


「えー、最近バイトを増やしまして」


「買いたいものでもあるの?」


「いいえ! 違います! そう、話せば長くなるのですが…………!」


 長くなるといっても変わらずとっても騒がしい祭さん。

 そんなこんなで、本当にようやくスタートです。



*** *** *** *** *** *** *** *** ***



「——と、いう感じです! ご静聴ありがとうございました!」


「……あれ?」


 祭さんの説明を最後まで聞いて、咲ちゃんから漏れたのは不思議な疑問の声でした。


「どうしたの?」


「いや、何か心当たりがあるようなないような……」


 そんな様子におかしいなと首を傾げ、尋ねる梅ちゃんに対して咲ちゃんはようなような。

 それもそのはずです。何故なら、


「友達がバイト始めるから、自分が試しに色んなバイトをやって感想を述べている、ね……」


「でも! これがまた、楽しいんですよ!」


「でも、その友達とは遊ぶ時間が減ってると」


「うぐっ……」


 この間、咲ちゃんが一人でお悩みを解決した紫さん。彼女の祭さんのお友達だったのですから。


 しかし咲ちゃんは、あれれとあっちへこっちへ頭を揺らすだけで思い出す事叶わず、


「んっと……それってバイトのシフト減らしたりとかは?」


 至って真剣にお悩み相談をするのでした。


「出来ます! というか今入ってるとこ、どこももうすぐ閉店しちゃうみたいですけど!」


「あんたが関係して……っていうんじゃないでしょうけど、運悪すぎよあんた」


 善かれ善かれと始めたことが、いつの間にやら自分を苦しめていた。それが今の祭さんですが、苦しんでいたのは彼女のバイト先全部もでした。


 もうすぐ閉店するのなら、もう何もしなくてもお暇さんはやってくる……そんな結論が出たところでお悩み相談は終了です。


「となると、新しいバイト先を見つけないといけませんね!」


「いや、それじゃ結局ダメじゃないの」


「他の解決方法、かぁ……」


 まだ終わっていませんでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「働くってなんでしょう!」


「働くってことだね」


「そのまんまね。もう少し頑張りなさいよ」


 たくさんの種類の職があるように、たくさんの答えがある……そんな難題を祭さんが口にしますが、答えは自分の中にしかありません。


「……でも、働かずにその人のためにっていうのは難しいわね。何かしてあげたいっていうのは分かるけど」


「え、分かるんですか」


 祭さんにうんうんと頷く梅ちゃんですが、共感された彼女は目を丸くして驚きつつ。

 胡麻たん占いも響子さんがいないため出来ませんし、一体どうしたものかと三人が首を傾げて、


「…………何もしなくていいんじゃない?」


「え?」


 咲ちゃんがぽつり、と呟きました。


「あ、何もじゃなくて、ほら。頑張ってーって応援したりとかじゃダメなのかなって」


「応援団なら高校生の時にやったことあります!」


「ああ、確かに似合ってるわね……で、つまりそれって」


 またもや脱線しそうな雰囲気になりつつも、それを梅ちゃんが戻して固めて咲ちゃんと頷きあって。

 そのまま咲ちゃんはココアをぐいっと飲み干し、目をカッと見開くと、


「祭さん、何もしなくていいんじゃない?」


「何もしないをするんですか!?」


「ややこしいわよ。……ほら、あれよ。友達だからお節介を焼きたくなるのは分かるけど、その子のためにならないでしょ?」


「聞いたらそうなんだってなるところもあると思うけど、それってその子のためになるのかなぁ……なんて、私は思ったり」


 そうして、なんだか妙に説得力のある雰囲気を出しつつ、二人は祭さんに改めて提案します。


「……やっぱり、何もしないをするっていう方向性にしない?」


 なんかもうあれな程にややこしく、そしてややこしい言葉でまとめながら。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



 何もしないをする、という結論でまとまって、すぐさま帰って行ってしまった祭さん。

 彼女の今後を胡麻たんが祈ったところで、


「…………あ」


「アイスなら買ってきてあるわよ」


「————わおん、わおん!」


「あ、ううん。そうじゃなくて」


 まるでアイスアイスと叫ぶような胡麻たんを見つめつつ、咲ちゃんはぽん、と手をついてうんうんと頷きました。


 どうやら紫さんのことを思い出したようです。


「どうしたのよ?」


 そんな咲ちゃんをまたまた不審がって、問いかける梅ちゃん。

 彼女に対し、咲ちゃんは何と伝えようかとぐぬぬと頭をひねって回して。答えがようやく出たかと思えば、


「次に祭さんが来る時は、ココア二つ用意しておいた方が良いかも!」


 ニッコリ笑顔でたった一言、そう言うのでした。

十一人目のお客さん


なまえ :小松里 祭

ねんれい:18歳

しょく :大学一年生

しゅみ :かけっこ

すき  :紫さん、運動、太陽

きらい :熱い飲み物、食べ物、寒さ

みため :いつでも灼熱太陽、真っ赤な短髪。

     Tシャツ。とても元気で熱い。

     紫さんより少し小さめ。あれは梅ちゃん以下。


ひとこと:祭です! なんかもうあれですね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ