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Calculated Box  作者: Re:Pu
3/3

僕らの世界

目の前には仮想の街が広がる。「肩の力を抜け」。歓楽から技術的な最新情報まで。

 某匿名巨大掲示板。ニュー速VIPやプログラマ板、軍事、実況、DTM、etc……、住人が自ら「ネットの吹き溜まり」、「便所の落書き」と自嘲する世界。

 それを2ch street visualizerは実際の街のように歩けるようにする。“ウェブ2ちょうめ”は広い。そして、うるさい。

 2ch street visualizerはVR技術が流行りだす少し前くらいから作られ始めていた。だんだん改良されていき、現在は実用に支障は一切ない。他サイトへ転用可能なバージョンが制作されており、livedoorしたらば用のβ版が公開されている。

『人がいっぱいだね』

 アニメ調アバターの“Tune”が話しかけてくる。

 現在アクセスしてる人の数を表示する。土曜日の午前。まあまあな数の人が見ているようだ。

『“フレンドを表示”にしようか』

 表示ユーザ範囲を変更する。

 俺と“Tune”だけになった。

『他にフレンドはいないのかな』

“Tune”が言う。

 フレンドのハード使用状況を見ると、確かに誰も使用していない。

 いくつもの通りが見え、それぞれ板の名前が看板のように曲がり角に表示されている。

『ん、あのスレ面白そうじゃない? 行ってみよう!』

“Tune”が指さしたのは「ゲーム速報板」のスレだった。

「ゲーム速報板」通りに入る。


【バンダイ】新作ティザーサイト公開!!【ナムコ】


1:名前は開発中のものです

バンダイナムコゲームスがOUYA、NVIDIA社製ハード向けのゲームのティザーサイトを本日公開しました。

サイトにはカウントダウンが表示され、6月23日午前0時にカウントダウンが終了する模様です。

クラウドゲームであることが推測されます。

また上記以上の詳しい情報は記載されていません。


153:名前は開発中のものです

バンナム? まだあんな会社残ってたのかよ


154:名前は開発中のものです

経営ぼろぼろで死にそうだよ。でもバンはともかくナムはまあまあ良いところなんだからいいんじゃね。


155:名前は開発中のものです

あそこがクラゲーかよ。やな予感しかしないんだが

てか単なるパブッリッシャじゃねーの


156:名前は開発中のものです

クラウドでラグりまくりのシューティングでもさせられんのかよ


157:名前は開発中のものです

どうせ適当なアドベンチャーだろ

シューティングはむしろバンナムなら信用できるんだが


“Tune”が指したスレッドを見る。更新されたばかりのスレらしい。スレタイだけでなく“1”と最新数レスが表示され、他のスレとともに「ゲーム速報板」の壁を流れている。コントローラで選択するとスレタイの周りが光り、そのスレの部屋に入った。

『バンナムってシューティングつくってたの?』

“Tune”が訊いてきた。

『知らないけど、ここにいる人曰く“ゼビウス”とか“エースコンバット”っていうのがあったみたいだ』

 部屋から出て、目を巡らすと据え置きハードの売れ行きについてのスレがあった。

“Tune”とともにスレに入る。

 壁に大きく昨日までの一週間のゲームハードの売れ行きの表が張られてある。相変わらず一位はSONYの携帯機。

『ニンテンドーのはやっぱあまり売れてないね』

『ハードゲーマ層は完全にソニーとマイクロソフトのものになってるし、ライト層は安いクラウドゲームマシンや携帯端末で済ませちゃうからな。

 ようやくパワーのあるマシンを出すようにはなったけど、まだまだ厳しいな』

 かつて日本での売り上げが低迷していたマイクロソフトのハードも、広告が改善され、「Steam」に代表されるPC向けインターネットダウンロード販売サービスの利用が可能になって以来、だんだん売れるようになってきた。

 部屋から出ると「ニュース速報VIP」に行き、適当にSSを見て回る。

 ときどきゲームネタのスレがあるが、おもしろいものが多い。才能の無駄遣いだ。

 しばらくすると、もう昼に近づいてきていることに気が付いた。

『そろそろやめっか』

『そうだね』

 2ch street visualizerを終了する。

 VRガジェットを外す。

 リアルの世界が目に飛び込み、酔うような感覚に襲われた。


 昼飯の後、チャット・ルームで“Leo”と会話していた。

『“Shin”。見たか、バンナムのクラウドゲー』

『さっきちょうど見ました』

『ちょっと前にはシンエンも新作をOUYA向けに出していたな。十年前、クラウドゲーム黎明期には、こうやってコンスタントに新作が出るようになるとは思わなかったな』

『そうだったんですか』

『ああ、ソフトが出ることは出るんだが、微妙だったり、技術が追いつかなくてラグが起きまくったり、そんな感じだった』

 モーションセンサがトレースした動きを“Leo”のアバターがする。進歩を歓迎しつつ、昔を懐かしんでいるのが伝わってくる。

『それより、フライトシューティングのオンラインゲーでもするか。基本F2P(フリートゥープレイ)だ』

『ああ、その手のゲームは昔よくやりました』

『今、誰がオンラインになってるかな』

 ホーム画面に戻り、フレンドのハード使用状況を確認する。

“KANON”、“Kiriya”、“Tune”、“Habeco”がオンライン。

『誘ってみるか』

“Leo”が彼らにテキストメッセージを送る。

 しばらくするとだんだん人が増えてきた。

 数分後には4人とも集まった。

 無料のソフトをダウンロードする。

『フライトシューティングですか。やったことないですね』と“KANON”。

『俺はオフラインならやったことあるな』と“Kiriya”。

『プロペラならやったことあるよ』と“Tune”。

 起動した者から順にチャット・ルームから抜けていく。

 俺も抜けようとしたところで、“Leo”がプライベート・チャットを要求してきた。

『なんですか“Leo”さん』

『このゲームが終わったら、お前は残っててくれ、話したいことがある』

 そう言うと、“Leo”はチャット・ルームから抜けた。


『マップ広いなー』

“Kiriya”が呟く。

 画面の左下に表示されたマップを見る。

 北東の方角にいくつもの反応が見える。映るのはステルス性能の低い機体のみだから、実際の数はもっと多いはずだ。

『んー。むずかしい』

“KANON”が操作に手間取っているようだ。

 しばらく飛んでいるとIRST(赤外線捜索追跡システム )が敵機を捉え、やがて目視で見えるようになってきた。

 と同時にミサイルの警報。

『ブレイク! ブレイク!』と“Leo”。

『ブレイク? なにそれ』と“Habeco”。

『急旋回だ。落とされるぞ』

 俺がそう言いつつ旋回すると、敵機と至近距離で交差した。その向こうにさらに数機の敵機が見える。

『あ、あ、あ〜〜。やられた』

“KANON”が墜ちる。初めてならしかたがないだろう。

 交差した敵の方向へ旋回する。

 ちょうど敵もこちらに向かってきていた。

 ヘッドオン。

 機銃を撃ちながら赤外線ミサイルを放つ。

 敵も同じことをしたらしい、俺は撃墜された。

 敵にはうまくかわされてしまった。ミサイルが外れたことを示す表示。

 MISSILE MISED。

 リスポンする。

『よっし、いただき。ビンゴ!』

“Leo”が一機撃墜する。

 リスポン地点から飛んでいると、交戦中の“Tune”を見つけた。

 敵と旋回しあったり、ヨーヨーやスプリットSを繰り返している。結構やるな。

“Tune”に気を取られている敵に赤外線ミサイルを撃つ。

『FOX2!』

 あっけなく命中した。

『ナイスワーク!“Shin”!』

“Tune”が俺に感謝してくれた。

 すぐに次の敵を探す。

 レーダーを見ると前方上空に敵機。

 辺りにステルス機がいないか目視で確認すると、敵機の方角へ向かう。中距離ミサイルを撃つ。敵は回避しようとしたようだが命中。そして撃墜。

 敵機の残骸を避ける。

 光が射し込む。視界を包み込む。

 コクピットが青に染まっていた。

 雲をいつの間にか抜けていたらしい。眼下には雲海が広がっている。そしてその上は一面の青。

 きれいだ。現実で感じることのない感覚。いや、どこかで感じたことがあった気がするが、思い出せない。

 ミサイルに捕捉された警告音が意識をゲームに引き戻す。

 ブレイクすると失速した。計らずとも敵機をオーバーシュートさせる。

 ミサイルを放つと撃墜できた。

 降下し、雲の下へ降りると、いきなり交戦中の敵味方入り乱れた区域に突っ込む。

 数秒後には撃墜されていた。

  

『それで、何の話ですか?』

 ゲームを終え、チャット・ルームのパーソナル・チャットで“Leo”と話す。

『お前、最近“Tune”とよく遊んでいるよな』

『ああ』

『その“Tune”についてだが、あいつ、頭にシリコン入ってやがるぜ』

『シリコン?』

『お前の学校で電波イジってたときに気づいたが、電波を送受信してるよ、あいつ』

『……どういうことですか』

『そのまんまだ。あいつ自身にAIの入ったコンピュータが積んであるかはわからないが、少なくともリアルタイムにかなりの情報をどこかとやりとりしているのは確かだ。さすがに内容は暗号化されていてわからなかったがな』

 あいつが、“Tune”の本質がコンピュータなのかもしれないのか。

『今友人に頼んで暗号化データを解読してもらってるところだ。もしかしたら、あいつとコンピュータ上で交信できるようになるかもしれない』

『“Tune”と、コンピュータ上で……』

『あいつがマジでバーチャルな奴だったらな。

 まあ、進展があったらまた教えるよ』

 そう言って“Leo”はチャットを終了した。

『バーチャルで……』

 俺もチャット・ルームから抜けた。


 オンラインフライトシューティングで雲の上を舞う。敵機と戦いながら青い空を駆け抜ける。

 先週初めてプレイしてから毎日やっているが、全く飽きない。

 だんだんゲームにも慣れてきて、まあまあいいスコアも出せるようになった。

 土曜日の今日、新たなマップが公開されるらしい。早速やってみる。

 マップの情報は今まで全く公開されていない。楽しみだ。

 数分後、発表会兼ゲームが始まった。

 首都攻防戦。


 始まった瞬間、目の前は星空だった。

 一面にではなくマップの中心に集中している。

 やがてそれらは輝く線と点の集まりとなり、いくつかは面発光した立体図形となり、視界を掠めていき……。

 ボギー、インサイト。

 チャットには驚きの声が溢れている。

 いくつもの光源の中照らされた敵機を捉える。

 敵の後ろをとる。ロックするとミサイルを撃つ。

 強烈なブレイクでかわされ、次の瞬間別の機体に後ろをとられる。

 旋回すると目の前に光の帯があった。

 避けようとしたら偶然にも回避機動につながり、敵のミサイル警報音が消える。

 レーダー上で近くの味方機がいきなり消えた。ミサイルによるキルではない。

 レーダーに気を取られていると、いつの間にか後ろの敵にミサイルで撃たれる。

 撃墜された。


 完全に仮想空間のステージだ。暗い空間にいくつもの光の筋、星。

 すごい、このゲーム、シューティングとかでなくとも十分に楽しめる。

 リアルな都市や山地がメインだったところに不意をつくステージだ。

 空を光が舞い、地上はネオン街。

 戦いは結局こちらのHQ(司令部)が落とされ、負けたが、十二分に衝撃的だった。

 そのステージが終わると、発表会兼ゲームが終わる。

 と、思ったその瞬間。

 画面が白に包まれる。

 やがて画面の中心から霞んだ黒い構造物が見えてきて、それが遠くの街並みだとわかるくらいに視界が繊細になると、画面にパラメータが現れ、コクピット内であることに気づき……。それらは全てモノクロで……。

 沿岸の都市、完全に白と黒の世界。

 どこがモチーフなんだろう。東京? 博多?

 僚機を見ると、戦闘機もモノクロだ。

 しばらく飛んで市街地も半ばのところまでくると敵のレーダー圏内に入った。

 ステルス性能の低いマルチロールに乗っていた俺は敵の早期警戒機のレーダーに捉えられ、リンクしている戦闘機からミサイルが飛んでくる。

 旋回する。

 ミサイルが無力化したことを確認すると、一番近くの敵の編隊へ向かう。

 いくつかの僚機が周囲にいることを確認すると、正面からその編隊に突っ込む。

 双方の編隊に強力な電子戦装備を搭載した機体があり、中/長距離のミサイルの攻防はなかった。

 本番は有視界戦闘。

 強力なIRSTを積んだ戦闘機から攻撃が始まる。

 自機のIRSTはそれほど強力でないため、僚機が次々とミサイルを撃つ中、俺は警戒レーダーの音を聴き続けることしか出来ない。

 回避機動をとっていたが、撃墜された。

 近くの、僚機が多いリスポン地点を選択する。

『だれか援護をしてくれ、HQへ向かいたい』

 首都攻防戦は双方のHQの内どちらかが陥落すればそちらの負けとなる。

 低高度を飛んでいると二機が援護に付いて来てくれた。

 何回か敵とすれ違ったが、何とか俺は生き延びた。共に飛んでいた僚機の内の一機は空中戦で墜ちた。

 HQに近づくにつれてSAM(地対空ミサイル)が増えてくる。

 旋回してミサイルを回避しながら進み、敵HQへさらに近づく。

 HQを守備している戦闘機は僚機に任しつつ、こちらからも対空ミサイルで応戦する。

 SAMは対地レーザーで焼く。

 HQを攻撃できる距離に到達する。HQの損耗率はグラフィック(見た目)で表現される。既にいくらかダメージを受けているようだ。

 マスターアームで誘導爆弾を選択する。

 落としつつ対地レーザーでも攻撃をする。別のアタッカーも攻撃に加わった。自機のさらに低空を前進翼のステルスマルチロール機がVTOL(垂直離着陸)モードで飛んでいる。

 直後にHQの上空をすさまじい速度で何かが飛んでいった。

 友軍の超音速爆撃機だ。ミサイルをかいくぐってここまで来てくれたのか。

 敵のHQのダメージが一気に大きくなり、そこに俺や他のアタッカーが追い打ちをかける。

 そして、敵のHQが陥落した。


 この感覚。光の舞う空やモノクロな街を飛ぶ感覚。

 快感。最高の感覚。他で味わったことなどあるだろうか。

 そこがなぜか引っかかる、どこかで味わった気がする。繊細さを、輝きを。バーチャルのような綺麗さを。

 わからない。思い出せない。

 いつだ……。

 戦績の画面を表示したまま何もせずにしていると、ゲーム機がテキストチャットを受信した。

 テキストチャットを開始する。

『よう、“Shin”。“例のあれ”、出来たぜ』

『アレって何ですか?』

 すると“Leo”がチャット・ルームを開始したことが画面端に通知される。

 チャット・ルームを起動する。

『もう忘れたのか、“Tune”の話だよ。出来たぜ、あいつとのオンライン交信ツール。やはり、意識の細かいレベルまでどこかのコンピュータで制御されている。あいつの意識はまるまるコンピュータで処理されて出来ているといって過言ではないレベルで』

『……』

 マジだったのか。

『シリコンが入っているというより、アンテナが入っているといった方が的を射ているな。あいつ自身はもともと前頭葉が入っていたところが電波の送受信機に入れ替わっているようなものだからな。本質は世界のどこか……俺は衛星を利用していると疑っているが、とにかくそこにあるコンピュータってわけだ。

 いろいろやっているみたいだぜ。視覚、聴覚みたいな五感の情報もやりとりしてやがる』

 そんなこと、可能なのか疑うようなことばかりだが、“Leo”の言うことなら本当なんだろう。

『そこでだ、この交信ツール、簡単にバーチャルであいつと会話することも可能だ、お前にやるから使ってみな。コンピュータに送ってやるから』

『わかりました』

『携帯用も作っているところだ、出来たら伝えとく』

『ツールをこちらに送るのに俺のパソコンのメールアドレスとかは必要ですか?』

『その必要はないな。圧縮したソフトウェアをオンラインに上げとくよ。URLをテキストメッセージで送る。時間制限付きパスワード付きだ。期待して開いてみな』

『それで、制限時間とパスワードは何ですか?』

『制限時間は今日一杯。パスワードは“Heart Beat”だ』

『わかりました』

 俺はVRガジェットを外し、コンピュータに向かった。


 デスクの上にはソニーのゲームマシンとその横に小型のPCが置いてある。モニタはゲームマシンと共有。

 キーボードとマウスを用意し、モニタの入力を切り替えるとPCを起動した。

 テキストメッセージで指定されたURLを開く。

 シンプルな入力欄と“Enter”ボタン、ファイルサイズのみのページが表示される。

 そこに“Heart Beat”と入力し、“Enter”を押す。

 するとダウンロードが自動的に開始された。

 数十分後、ようやくダウンロードされた圧縮ファイルの解凍が終わると、ソフトウェアが出てきた。

 起動すると、“Heart Beat Tune”という名前のウインドウが表示された。

 ウインドウの中には「通信内容生」「視覚」「聴覚」等というボタンが並んでおり、その一つに「会話」があった。

 それをクリックすると、ウインドウに「接続中……」と表示された。

 接続が完了すると、画面には双方の音声レベルと、“Tune”の3DCGが表示された。

 ためしにマイクをオンにしてしゃべってみた。

『“Tune”、聞こえる?』

 数秒のラグの後、返答が返ってくる。

 画面の“Tune”も表情をリアルタイムで変えていく。表情の情報を読み込んで反映させているのか。

 モニタからVRガジェットへ出力先を換えて、VRガジェットを装着する。

『え、どういうこと? もしかして“Shin”?』

『そう。“Leo”さんの友人がこうやって会話できるようにしてくれた』

『……バレてたんだ』

『俺はぜんぜん気づかなっかったけど、“Leo”さんが気づいたっぽい。

 これでおまえの本質と話せるな』

 よく考えたらすばらしいツールじゃないか。いつでも、バーチャルな“Tune”の本質と会話が出来る。

『でも……』

『あのさ、この前やったフライトシューティングの新MAPがすごく良くできていてさ、一緒にやらない?』

『ねえ、それより』

『なんだ?』

『学校で会ってもあまり話もしないし、休日もこうやってネットで話してばかりでさ、実際に会って話とかしないの? リアルで……さ?』

 リアルで? どうしてだ?

『え、なんでだよ。

 本当に新マップはすごい良かったし……ていうか“Tune”はオンラインでコンピュータから直接映像とか音声とかやりとりできるんじゃないか?

 ってことはゲームで直接“Tune”と……』

『ねえ、私とリアルで会ったりしてくれないの?

 リアルで会いたい。私は』

『……は? リアルのどこがいいんだよ。そんなところで会う必要は無いだろう』

 リアルは綺麗じゃない。不整合で、醜く、汚い。

『とにかく、私は“Shin”とリアルで会いたいの!』

 俺は叫ぶ3DCGの“Tune”を見つめる。

『嫌だ。現実世界のどこがいいんだよ。バーチャルな空間で楽しもうぜ。ずっと、綺麗な』

 少しの間沈黙が続く。

『……私を見て』

“Tune”が呟いた。

「『リアルで私を見てよ! 新而!』」

 誰かにVRガジェットとヘッドセットを外される。

 振り返る。

 黄色い目と、白い髪。

「椎……原……」 



 この感覚。この感覚だ。

 初めて会ってから、忘れかけていた感覚。

 黄色に輝く粒子の風が頬を掠める。

 完全な白い髪が翻り、幻影を残し、光の粒が舞って……。


 リアルにも、こんな感覚があったんだ。



「てか、早かったな。ここまでどうやって来たんだ?」

「どうやって来たも何も、すぐ三軒先よ、私の家」

 え、そうだったのか。

「椎原って以外と近くに住んでたんだな」

「というか新而は気づかなかったんだ? 学校から帰るときに見かけなかった?」

「全然。見たのかもしれないけど、さっぱり覚えてない」

「はあ……」

 椎原は溜息を吐く。

「ゲーム屋にでもいく?」

 椎原が言う。

「そうだな」

 俺はソニーのゲームマシンとコンピュータ、VRガジェットの電源を切ると携帯端末と携帯ゲーム機を持って椅子から立つ。

「たまにはオフラインゲームもしたいし」

 俺は椎原と一緒に家を出た。

 解りにくいかもしれませんが、バーチャルに魅せられた少年が、リアルにも存在するデジタルな整合性に気付く……ということを表現したかったんです。

 なんだかすごく失敗した感がしますが、ゲーム好きの方には許してもらえると信じています。

 お読み下さりありがとうございました。例によって部活誌向けに書いた小説です。

 コンセプトの一部が同じ曲→ http://www.nicovideo.jp/watch/sm21280959

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