story.95
「うぅぅ、痛いです」
セフィは転がり落ちた後、暗闇の中で何とか止まったようでうずくまっていると、
「クー」
フィルがセフィを見つけて心配そうに声をかけるが、
「フィルちゃん? どこですか?」
セフィの目は暗闇に慣れていないせいか、フィルを見つける事は出来ずにいる。
「クー」
フィルはセフィを落ち着かせようと思ったようで小さな炎を吐き、明かりを灯すが、
「………」
明かりが灯ったその時、
セフィの視線には何かが映ったようで、
「きゃぁぁぁぁぁ」
セフィは悲鳴にも取れる声をあげる。
「……何があったんだろうな?」
響いてきたセフィの声にエリトラはため息を吐くと、
「わかりませんけど、急ぎましょう」
エリスはセフィの身を心配しているようで頷き、
「まぁ、そうだな」
エリトラは何かを思い出しているのか、真剣な表情になり歩を速め、先を進み始めるが、
「……慌てるな。状況もわからないで先に進むのはただのバカだ」
クロスは歩を速める事はない。
「クロスくん、セフィちゃんが心配じゃないんですか?」
クロスの言葉にエリスは怒り気味にクロスに言うが、
「急いで、あのバカと同じく転げ落ちる気か?」
クロスは表情を変える事なく言い、
「フィルがいる」
フィルを信頼しているようで、セフィは問題ないと言い切り、
「ですけど」
エリスはクロスの言葉に不安げな表情のまま言うと、
「話してる暇なんてないだろ」
エリトラはクロスとエリスが話をしているのを見て、そんな事より先に進めと言う。
「……」
エリトラの言葉にクロスは返事をする事なく、先を進め始めると、
「エリトラさん、灯りもないのに危ないですよ」
エリスは暗闇の中を進んで行くエリトラに声をかけるが、
「……」
エリトラはセフィを助けに行く事しか考えていないようでエリスの声は耳には入らない。
「……行くぞ」
クロスはエリトラの様子に何かを感じ取ったようでエリスに向かい言うと、
「エリトラさんはどうしたんでしょうか?」
エリスはエリトラの鬼気迫るような行動に不安げな表情をする。
「……戦争を経験した人間はどこか壊れている。あいつは助けられなかった仲間とあのバカを重ねているんだろう」
クロスは表情を変える事なくそう言い切り、
「……それって、危ないですよね?」
エリスはクロスの言葉に彼女なりに思うところがあるようでクロスに聞き返し、
「……あぁ」
クロスは短く頷く。
「何かに囚われれば、周りを見る事ができなくなる」
クロスは自分の事を言っているようで、自虐的な笑みを浮かべながらもエリトラの後を追いかけて行き、
「それがわかってるなら、もう少し」
エリスはクロスの後ろを歩きながらため息を吐くが、
「……そんなに簡単に割り切れれば、誰も神などくだらないものにはすがらない。自分の過去に囚われるのも、神など偶像にすがるのも結局は人が弱いからだ」
クロスは自分が弱いと言う事を理解しながらも復讐からは逃げられないと言いたいようでそう言い、
「そうかも知れませんけど……」
エリスはクロスの言葉に心配そうにクロスに中に声をかけようとするが、クロスの苦しみを理解していない彼女には言葉が見つからない。