story.93
5人は休憩を終えると特に何も起こる事なく、発見された遺跡までたどり着き、
「これが遺跡ですか?」
セフィは鉱山の通路の1部開けたところに見える、遺跡の入口らしきものを見て驚きの声をあげているが、
「今は特に唸り声ってものは聞こえないな」
「そうですね」
クロス、エリトラ、エリスの3人は調査依頼にあった、唸り声が聞こえないか耳を澄ませている。
「……」
セフィは誰も反応してくれないのを見て、慌てて3人と同じように耳を済ませるが、
「……」
セフィにも唸り声のようなものは聞こえず、
「……何も聞こえません」
セフィは何をして良いかわからないようでぽつりとつぶやくと、
「邪魔をするならそこら辺で静かに座っていろ」
クロスはセフィが目障りなのか、セフィに向かい言い、
「……」
セフィは先ほどの治癒魔法の件から、クロスの機嫌がさらに悪くなっている事に気づいているようで、肩を落としながら黙り込み、
「クー」
フィルがセフィを励ますようにセフィの肩を叩き、
「フィルちゃん」
セフィはフィルの優しさに感動したようでフィルの名前を呼びながらフィルを抱きしめると、
「クー」
フィルはセフィの腕の中がお気に入りのようで喜び始めるが、
「黙ってろ」
クロスから2人に向かい冷たい声が飛び、
「……はい」
「……クー」
2人はクロスの言葉に小さく返事をする。
「そこまで言わなくても良いんじゃないか?」
エリトラは苦笑いを浮かべながらクロスに向かい言うと、
「騒がれたり、下手に動き回って、手掛かりを潰されてたまるか」
クロスはセフィが調査の邪魔にしかならないと言い切るが、
「ですけど、今回は冒険者クラスにシーフを持ってる人もいませんし、人手は必要だと思いますよ」
エリスがセフィに助け船を出す。
「……だよな」
エリトラはエリスの言葉に苦笑いを浮かべて同意した時
「……ん?」
クロスはエリスの言葉など気にするような素振りをみせずに通路の壁を調べ始めている。
「クロスくん」
エリスはそんなクロスの様子にため息を吐きながらクロスを呼ぶが、
「エリス、ちょっと、ここを見てくれ」
クロスは壁に何かを見つけたのかエリスを呼ぶ。
「何かありましたか?」
エリスはクロスに近づくと、
「前の調査の時には通路の壁はどんな風に調査した事になってる」
クロスはエリスに以前に行われている調査の事を確認し、
「以前の調査では壁に関しては特に精霊使いの人が魔力の確認をしてもおかしなところはありませんでしたし……」
エリスは持って来ていた調査資料を広げると、
「その資料にはこれについて書いてあるか?」
クロスは自分が気づいた壁の異変を指差し、
「あれ?」
エリスは資料とクロスが指差した個所を見て首を傾げる。
「何ですか? これ? 特に可笑しな魔力もないのに?」
エリスは首を傾げたまま言うと、
「何があったんです?」
セフィがエリスの後ろから、覗きこむ。
「ここ、何ですけど」
エリスはクロスに魔力を見てくれと言われた個所を指差し、
「魔力に異常は感じられないんですけど」
エリスは壁を押すと、
「えっ!?」
エリスの腕は壁の中に消えていく。
「こ、これはどういう事ですか?」
セフィは目の前でエリスの腕が壁の中に消えて行くのを見て驚きの声をあげると、
「ここの壁は何か特殊な作りになっているのだとは思うんですけど、魔法以外の力で行われているんです」
エリスは今の状況を確認するように頷きながら言う。
「これは鍛冶師組合は知らない事なんだよな?」
クロスは以前の調査でこの特殊な壁の事は調べられていないかエリスに確認をすると、
「ちょっと、待ってください。今、資料を確認し直しますから」
エリスは持ってきていた、今までの調査をまとめた資料を確認しはじめた時、
「ぐおおおおお」
壁の奥から唸り声が響く。
「ひい!?」
セフィは鉱山内に響く唸り声に驚きの声をあげると、
「どうやら、原因はこの奥みたいだな」
「あぁ」
唸り声が聞こえた壁を見つめてエリトラが言い、クロスはその言葉に頷き、
「行くか?」
先に進もうと言うが、
「本当ですか!?」
セフィは唸り声を聞いて不安げな表情で聞き返し、
「当たり前だ」
クロスは当たり前の事を言うなと言った表情で言い切る。