story.91
「そうか? まぁ、人は殺し慣れてないだろうな」
エリトラに取っての戦闘は戦争を指差しているようで首を傾げると、
「セフィちゃんは神官さんですから、あまり生物の生き死に関わる戦いはしてないでしょうしね」
エリスは苦笑いを浮かべながら言うが、
「神官こそ、人の生き死に関わる戦いしかしてないだろ」
エリトラはエリスの言葉に納得がいかないような表情で言う。
「確かにそうですけど、セフィちゃんは本当に教会の闇の部分を知らないみたいですね。知ってたら、あの子はあんな良い子に育ちませんよ」
エリスは苦笑いを浮かべたまま、柔らかくセフィを世間知らずだと言うと、
「世間知らずね。いいとこの娘なんだろうな」
エリトラはエリスの言葉に納得したように頷き、
「あいつはなんのために冒険者になったんだ?」
セフィが冒険者を始めた意味がわからないようで首を傾げる。
「さぁ、それはわかりませんし、それは聞かないお約束です。人にはそれぞれ進むべき道がありますから、エリトラさんだって冒険者になった理由があるでしょう? 今は聞くほど親しい仲ってわけでもないでしょうし」
エリスは彼女なりに考えがあるようで、にっこりと笑いながらエリトラに向かい言うと、
「まぁ、確かに」
エリトラはエリスの言葉に苦笑いを浮かべ、
「縁があれば、聞く機会もあるだろ」
エリスの言葉に納得したようで頷き、
「それを知るのは神様のみです」
エリスはうんうんと頷きながら言い、
「神様ねぇ」
エリトラは『神』と言う言葉に苦笑いを浮かべ、
「エリスは神様って奴を信じてるのか?」
エリスに聞き返す。
「わたしにそれを聞きますか?」
エリスはエリトラの質問に苦笑いを浮かべると、
「エルフで精霊使いだからな」
エリトラは自分の質問に苦笑いを浮かべ、
「あまり、エルフで神様を信仰する人はいませんね。まぁ、『神の奇跡の効果がある』程度には信じてますよ」
エリスはエルフと言う種族自身があまり神を信仰しないと言い、
「エリトラさんはどうなんですか?」
エリトラに聞き返す。
「俺は信じてるぞ。ただ……」
エリトラは神を信じると言った後、
「……神は何よりも無慈悲で残酷だとな」
何か昔の事を思い出しているのか皮肉を込めたように言うと、
「……まぁ、人生いろいろです」
エリスはエリトラの言葉にクロスに視線を送りながら言い、
「まぁ、そう言う事だな」
エリトラは苦笑いを浮かべ、
「少なからず、冒険者なんて職業についていれば、神にすがる気持ちと神って存在を認めたくない気持ちの狭間にいる事は確かだな」
自分と同じような考えの人間が冒険者の中には多いと言う。
「そんな中で、セフィちゃんは何を思うんですかね?」
エリスは視線の先をセフィに移しながら言うと、
「さあな。それこそ、神のみぞ知るって感じだろ?」
エリトラはため息を吐きながら言い、
「そうですね」
エリスは苦笑いを浮かべながら頷く。
「……いつまでも無駄話をしているな」
エリトラとエリスが話し込んでいる間にクロスとセフィはコウモリを撃退しており、クロスは呼吸を乱す事なくエリトラとエリスに言うと、
「ん。ご苦労様」
エリトラはクロスに軽く言うが、
「……別に苦労などしていない」
クロスは表情を変える事なく言い、
「行くぞ」
コウモリと戦う時に置いたランタンを持ち上げ歩き出そうとする。