story.90
「……やれやれ」
セフィに向かい飛んで行く蝙蝠とそれを見て慌て先ほどのクロスのアドバイスを忘れているセフィを見てエリトラはため息を吐くと、
「サラ、助けてやれ」
肩の上にのっているサラに向かい言い、
「ぐる」
サラはエリトラの言葉を理解しているのか頷き、
「ふぇっ!?」
サラから炎の渦が放たれ、炎の渦はエリトラの前方にいるセフィを避け、セフィに向かって飛んできた蝙蝠に向かい飛んで行く。
「後は自分でやれよ」
後方から飛んできた炎を見て、目を白黒させているセフィにエリトラは苦笑いを浮かべながら言うと、
「は、はい」
セフィは声を裏返しながら返事をするなか、
「……」
クロスは残りの2匹の蝙蝠を相手にしている。
「……」
蝙蝠2匹は各自クロスを捕らえようと爪を向けながら、クロスに向かい飛んでくるが、
「……」
その攻撃は1匹ずつ単体で行われるためか単調であり、蝙蝠の爪はクロスを捕える事はできない。
「クロスくんは大丈夫そうですね」
エリスはクロスの姿を見てそう言うと、
「そうだな。クロスの体捌きはたいしたものだ。あれだけ動ける奴は戦場にもいなかったぞ」
エリトラはエリスの言葉に頷き、
「それで、あっちはどうするんだ?」
苦笑いを浮かべながら、蝙蝠1匹を相手にてんぱっているセフィを見て言う。
「そうですね。相手が上から襲ってくるのもあるのでしょうか。完全に浮足立っていますからね」
エリスは苦笑いを浮かべながら言うが、
「わたしが相手をして来ても良いんですけど、この通路じゃセフィちゃんと入れ替われもしないですし」
通路の広さからはセフィと入れ替わる事も出来ないと言い、
「無理な援護はセフィちゃんに当たっても困りますしね」
先ほど、セフィに当たりそうな攻撃をしたエリトラに向かい言う。
「そりゃあ、悪かった」
エリトラはエリスの言葉に口だけで謝ると、
「仕方ない。俺がやるか」
ため息を吐き、
「……我が名、エリトラ=ハルハザードの名にて命ず……」
エリトラはサラを呼んだ時とは異なり、真剣な表情をして魔法の詠唱を始めるとセフィが相手をしているコウモリの後ろが徐々に歪んで行く。
「へぇ、あれが妖精魔法ですか。ホントに妖精界との門を開くんですね」
エリスはエリトラの使用する妖精魔法を始めて見るようで感心していると、
「……来い」
エリトラの魔法の詠唱が終わったようで歪んでいた空間から30cmくらいの背中に羽をつけた人型の妖精が現れる。
「……頼むぞ」
エリトラは現れた妖精に微笑みかけると、妖精にはエリトラの言葉が伝わっているようで、風の刃が蝙蝠を襲い、蝙蝠は妖精の魔法で羽根が傷つけられ空中でバランスを崩す。
「これくらいの援護で良いだろ」
エリトラは蝙蝠がバランスを崩したのを見て言うと、
「そうですね」
エリスは頷き、
「セフィちゃん、落ち着いてください。さっき、クロスくんが教えてくれた事を思い出せば簡単に倒せる相手ですから」
蝙蝠がバランスを崩した事に何があったかわからないような表情をしているセフィに言う。
「は、はい!?」
セフィはエリスの言葉に声を裏返しながら返事をすると、
「さ、最初に深呼吸をして……」
セフィは先ほどのヴァイパーとの戦闘を思い出そうとその時の事を慌てて思いだそうとするが、やはり慌てているようで深呼吸をする事はなく、
「セフィちゃん、深呼吸です。大きく息を吸って、ゆっくりはく」
エリスは苦笑いを浮かべながらセフィに言い、
「すー、はー」
セフィはエリスの言葉に深呼吸をする。
「えーと、そして、相手の動きをしっかりと見て次の動きを予想する」
セフィは一呼吸置いた事で冷静になったのか、クロスのアドバイスを思い出したようで蝙蝠に向かい体勢を整えるとしっかりと剣を構え、
「えい」
エリトラの妖精魔法でバランスを崩している蝙蝠に斬りかかって行く。
「こうやって、落ち着いてると割と堂に入った剣を使うんだけどな」
エリトラはセフィが攻撃に転じたのを見て苦笑いを浮かべながら言うと、
「たぶん、セフィちゃんはしっかりとした剣の訓練を受けてるとは思いますよ。圧倒的に戦闘経験が少ないだけだと思います」
エリスはセフィの剣すじを見て言う。