story.68
「……ちっ」
クロスはセフィの様子に彼女は教会が異教徒をどう扱っているかも知らない事に気づいているようで苛立ったように舌打ちをすると、
(……)
セフィから手渡されたクオの形見である聖印を握りしめる。
(……あいつは何なんだ? イライラする)
クロスの過去を知っている冒険者や知人は多々いるが、彼らはあくまでもクロスの個人の問題として引いてくれた部分もあるが、セフィは神を信仰する者としてクロスの過去に土足で踏み込んでこようとする。
それは彼女にとっては当然の事なのかも知れないが、他者と交わる事を良しとせず、父親の命を奪った者に対する復讐のために生きているクロスには考えられない事であり、彼女の態度がクロスには癇に障る。
(……自分の信じてる存在がどれだけ無情で残酷かも知らないやつが何を言うんだ)
クロスにも『神と言う偶像を信じている時期』は存在した。クオの元で彼から自然への理、神の教えを学んだ時期が……
クオと幼い自分が信仰していた『知識と好奇心の象徴である幼神』の教えを信じ学んだものの多くは現在も彼の中に存在している。
そうでなければ、小さな頃から冒険者と言う危険な道を生き残れるはずが無いのだから、彼は冒険者として生きるなかで多くの事を学んだ。
それはすべて『父親を奪った者達や彼の父親を見捨てた神への復讐』のために……
それは彼の『存在理由』である。
(あいつを見ていると昔を思い出すんだ)
自分が捨てた過去と同じように純粋に自分の信じる神を信仰し、真っ直ぐに進んで行くセフィに父親を失った日に決別した自分が重なる。
そんな苛立ちがクロスの中に満ちて行く。
(……くそ)
クロスはそんな苛立ちを抑えつけるように頭を掻いた後、考える事を無理やり止めようとしたのかソファーに寝転び目を閉じる。