story.66
「クロスさん、ありがとうございました」
セフィは風呂からあがると濡れた髪を拭きながらクロスに風呂を貸してくれた事のお礼を言うが、
「……」
クロスから返事はない。
「クロスさん?」
セフィはクロスから返事がない事にクロスの名前をもう1度呼びクロスに近づくと、
「……」
クロスは眠っているようである。
「寝てるみたいですね」
セフィはクロスの様子にそう言うと、
「……つんつん」
クロスの無防備な寝顔に何を思ったのか頬を指でつつくがクロスが反応する事はなく、
「起きませんね」
セフィは少しつまらなそうにそう言うと、クロスから借りた寝室に移動する。
「……フィルちゃんも寝てる」
セフィは寝室に入るとフィルを見つけて近寄るが、
「……クー」
フィルもすでに眠りについているようで気持ちよさそうに寝息をたてている。
「……つまらないです」
セフィはクロスもフィルも相手をしてくれない事が不満なようでそう言うが、
「私も寝ましょう」
起きていても仕方ないと思ったようで布団を被ろうとした時、
「あれ?」
セフィの目に焦げた聖印が目に入る。
「これって、聖印ですよね?」
セフィは神を信じていないと言っていたクロスが聖印を持っている事に首を傾げながら、
「何で、クロスさんが?」
聖印を手に取ると、
「これって!?」
クロスの持っていた聖印がセフィが所属している教会が邪教としている神を信仰している証である事に気づく。