story.65
「キレイに片づいてますね」
セフィはクロスの部屋に入るなり、部屋の中を見回して言うと、
「クー」
なぜか、フィルが胸を張り、
「まさか、フィルちゃんに片づけをさせてるんですか!? クロスさん、酷いです!!」
セフィはフィルが部屋の整頓をしていると勘違いしたようで、クロスを非難するように言うが、
「……そんな訳ないだろ」
クロスはため息を吐く。
「違うんですか?」
セフィはクロスの言葉に少し不満げに言うと、
「部屋を持ってるとは言え、冒険者なんだ冒険前に片づけて行かないと大変な事になる」
クロスは『何か悲惨な状況』を思い出しているようでそうつぶやき、
「へぇ、クロスさんでもそんな事をした事があるんですか」
セフィは過去のクロスの失敗を聞いたと思ったようでくすりと笑いながら言うが、
「……勘違いするな。俺はそんな事はしない」
クロスはセフィを睨みつけて言い、
「ここの前の所有者がしたんだ」
クロスは以前に見た悲惨な状況が目に浮かんでいるのか、ため息を吐く。
「前の所有者? ……すいません」
セフィはクロスの言葉にまた何かを勘違いしたのか表情を曇らせると、
「勘違いするな。引退しただけだ。生きてると言うか、あいつは簡単に死にはしない」
クロスはセフィが勘違いしたであろう言葉を否定し、
「そうなんですか」
セフィは胸を撫で下ろす。
「あぁ」
クロスは頷くと、
「ベッドはお前が使え」
自分がいつも使っているであろう寝室を指差し、
「明日は足を引っ張らないようにしろよ」
自分は居間に置いてあるソファーで眠るつもりのようでソファーに座るが、
「まだ、眠るには時間が早くないですか?」
セフィはまだ、クロスに聞きたい事があるのかクロスの向かい側のソファーに腰を下ろす。
「昨日まで野宿だったんだ。疲れも残ってるだろ。お前はなれてないんだから、目には見えない疲れが溜まってるはずだ」
クロスは無愛想ながらもセフィの体調を心配しているようでそう言うと、
「クー」
フィルもクロスと同じ意見のようでセフィに今日は休めと言いたげに頷き、
「わかりました。ですけど……」
セフィはクロスの意見には納得するが、
「……その前にお風呂貸してください」
長旅の汗を流したいと思ったねか少し顔を赤らめて言い、
「……フィル、案内してやれ」
クロスはセフィの言葉にため息を吐く。