story.64
「あの、クロスさん……」
蒼き剣亭を出てしばらくすると、セフィがクロスの名前を呼ぶ。
「……なんだ?」
クロスはめんどくさそうに返事をすると、
「怒ってますよね?」
セフィは今回は完全にクロスを巻き込んでいると言う自覚があるようで申し訳なさそうにクロスに聞く。
「当たり前だ」
クロスは短く返事をすると、
「最初に言っておくぞ。今回限りだ。明日の依頼が終わったら、二度と俺に関わるな」
クロスはセフィにこれ以上巻き込むなと言う。
「そうならないように努力します」
セフィは自信なさげに返事をすると、
「あの、ジルさんが言っていたこの時期は宿が取りづらいって言うのはどういう事ですか?」
話を変えようとしたのか、クロスに向かい聞く。
「……お前は本当に大丈夫か?」
クロスはセフィの言葉に呆れたようなため息を吐くと、
「もうすぐ、この街で祭りがあるんだ。それで露店を出す行商人や護衛依頼を受けた冒険者達が街に溢れ出す」
セフィに向かい説明するが、
「へぇ、そうなんですか」
セフィは本当に知らなかったようで感心したように頷く。
「……ホック達の依頼者もこの祭りに参加するためにここに着たんだぞ。本当に何も聞いてなかったのか?」
クロスはセフィの反応に呆れたように言うが、
「全然、知りませんでした」
セフィは恥ずかしげもなく答える。
「……もう良い」
クロスはセフィの言葉に疲れたようで冷たくそう言うと、
「無駄話はここまでにして、さっさと行くぞ」
セフィに向かい言い、歩く速度を速め、
「待ってください!?」
セフィはクロスを追いかけ、
「クー」
フィルは2人の後をついて行く。