story.63
「……簡単に言い過ぎな上に意味がわからん」
クロスはジルの言葉に頭を押さえながら言うと、
「セフィちゃんの部屋がないのよ。あんたは部屋持ちだろ。女の子の1人くらい、2、3日泊めてあげれるだろ」
ジルはクロスに経緯を説明するが、
「ここに部屋が無いなら、自分で探させろ」
クロスはセフィの間抜けさに頭が痛いようで頭を押さえながら言う。
「ですよね……」
セフィは流石にジルの提案には問題があると思っているのか頷くと、
「私、部屋を探しに行きます」
フィルを抱きしめながら肩を落とし、店を出て行こうとする。
「ちょっと、待ちなよ」
ジルはセフィを呼び止めると、
「クロス、この時期に宿をとる事が難しいのはあんたもわかってるだろ。それにセフィが宿も見つけられなかったら、明日の仕事に影響があるよ。あんたもプロなら仕事を第一に考えな」
クロスを一喝する。
「……いてもいなくても仕事に影響ないだろ」
クロスはセフィをただの人数合わせと思っているためかそう言うと、
「立ち寄った街で宿を探すのは冒険者に必要な能力だ。それくらいはさせろよ」
ため息を吐く。
「それが出来そうな子なら、あたしも何も言わないよ」
ジルはセフィにそこまで求めるのは危険だと判断したようでため息を吐くと、
「……それもどうなんだよ」
クロスはセフィを見て、もう1度ため息を吐く。
「良いかい。これはあたしからの命令。クロス、あんたはこれに従う義務がある。そうだろ?」
ジルはクロスに貸しがあるのかニヤリと笑うと、
「……わかったよ」
クロスは頷き、
「良いんですか?」
セフィはクロスに向かい聞き返す。
「仕方ないだろ」
クロスが諦めたようにそう言った時、話しに聞き耳を立てていた店の中にいた他の冒険者達から茶々を入れられるが、クロスは反応する事はないが、
「そ、そんなんじゃありません!?」
セフィは顔を真っ赤にしながら、他の冒険者達からからかわれている事を否定してまわっている。