story.53
「あっ!?」
セフィは声をかけてきた少女の顔を見て驚きの声をあげると、
「この前は名前も告げずに申し訳ありませんでした」
少女はセフィに向かい頭をさげた後にセフィがクロスの腕に抱きついているのを見て、
「……あの、私、お邪魔でしたか?」
何かを勘違いしているようで苦笑いを浮かべる。
「ち、違います!? ぜ、全然、そんなのじゃないです!!」
セフィは慌てて少女の言葉を否定するとつかんでいたクロスの手を放し、
「そうですか?」
少女はセフィの態度に何かを感じながらもそう言うと、
「ここでお会いしたのも何かの縁でしょうし、私はシェリル=ノーマッドと言います」
微笑みながら自分の名前を名乗る。
「セフィリア=ユノスです。セフィで良いです。この人はこの前話した……」
セフィは慌てながら自分の名前を名乗ると、クロスを紹介しようとするが、
「この前、お話しされていたクロスさんですよね」
シェリルはセフィとした話を覚えていたようでクロスの名前を呼び、
「で、この子がフィルちゃん」
フィルの頭を撫でる。
「クー」
フィルはシェリルの行動に嬉しそうに声をあげると、
「……シェリル、行くぞ」
シェリルの連れなのか漆黒のロングコートを羽織り深紅の瞳をした男がシェリルの名を呼ぶ。
「わかってるわ。ジョセフ」
シェリルは男の名前を呼ぶと、
「それじゃあ、また、縁があったら」
3人に頭を下げて男の後を追いかけて行く。
(……あの男、こいつを見てたな)
クロスは男がセフィに鋭い視線を向けていたのに気づいていたようで、
「お前、あの男を知っているか?」
セフィに向かい聞くが、
「知りませんよ」
セフィはクロスの質問の意味がわからずに首を傾げる。