story.51
「……これにするか」
クロスは剣を決めたようでそう言い、アルトの方を見ると、
「へぇ、そうなんですか。やっぱり、クロスさんって凄い人なんですね」
「そりゃ、そうだろ。あの『剣の旅団』のパナシェ自らが勧誘するほどだからな」
セフィはアルトと話し込んでいる。
「あの、剣の旅団って有名なギルドなんですよね?」
セフィは先ほど出会ったパナシェの事をアルトに聞こうとした時、
「……お前はあまりおかしな事を言うな」
クロスはアルトの前に剣の代金を置きながら、セフィの質問を止める。
「何がですか?」
セフィはクロスが自分を止めた理由がわからずに聞き返すと、
「あー、あれだ。セフィちゃんを俺に取られると思ってだ。あんまり、独占欲が強いとうざがられるぞ」
アルトはクロスとセフィを見ながらニヤニヤと笑う。
「えーと……」
アルトの言葉にセフィは少し顔を赤らめながらクロスの顔を見るが、
「それはない」
クロスは表情を変える事なく否定し、
「仮にも冒険者が聞く質問じゃない」
クロスは短くそう言うと、
「でも、わからない事を聞くのは必要な事ですよね?」
セフィはクロスが否定したのに少しムッとした様子で言う。
「なぁ、フィル。あの2人は結局、どうなってるんだ?」
アルトはクロスとセフィの様子を見て、2人に聞こえないようにフィルに聞くと、
「クー」
フィルはまだそんなところまでは言っていないと考えているようで首を振りながら返事をする。
「そうか」
アルトはフィルの様子に苦笑いを浮かべると、
「クロス、セフィの言う通りじゃないか。わからないから聞くのは必要だろ。セフィはどのタイプの冒険者を目指しているかはわからないんだ。情報を集めるのも冒険者には必要だろ」
セフィの行動は間違っていないと言い、
「と言う事でちゃんと教えてやるんだぞ」
クロスが置いた剣の代金を受け取り、
「ほら、用が終わったなら、さっさと出て行け。俺はいつまでもお前にかまっているほど、暇じゃない」
店に他のお客がきたようで、クロスとセフィを追い出すように手を振り、
「あぁ」
「ありがとうございました」
「クー」
3人は店を出て行く。




