story.49
「……フィル」
クロスは食事を終えると、フィルの名前を呼び、
「クー」
フィルはクロスの荷物を持ち上げる。
「ん? どこか行くのか?」
エリトラはクロスの様子を見てクロスに声をかけると、
「あぁ、俺はこの街を拠点にしてるから、住む場所もあるんでな」
クロスはこの店に泊まる気はないと答え、
「そうなんですか?」
セフィはあまり知り合いのいない場所にいるのが不安なのか、声のトーンを落として言う。
「クー」
フィルはセフィの様子に何かを言いたげにクロスに声をかけるが、
「却下だ」
クロスはフィルの言いたい言葉の意味を理解しているようで、フィルの言葉を却下する。
「まぁ、普通に考えるとそうだろ」
エリトラもクロスと同意見なのか苦笑いを浮かべていると、
「どういう事ですか?」
セフィは意味がわからずに首を傾げている。
「まぁ、お前は気にしない方が良いな」
エリトラはセフィの様子にため息を吐き、
「フィル、今日はあいつについててやれ」
クロスはフィルから荷物を受け取り言うと、
「クー」
フィルはクロスの言葉に頷き、セフィに抱きつき、
「……明日の朝、顔を出す」
クロスは店を出て行く。
「フィルちゃん、ありがとう♪」
セフィはフィルが残ってくれた事に安心したのか嬉しそうにそう言うが、
「セフィ、あんた部屋も借りるんだね……」
ジルがセフィに向かい宿泊費を伝えると、
「……あれ? 足りない?」
セフィはまだ剣を売っていないせいか、旅銀にも底がつきかけているのか財布の中身を確認し、
「これ、食事代です」
食事代をジルに渡し、
「クロスさん、待ってください!? 私に武器のお店教えてください」
クロスを追いかけて行く。
「忙しい娘だね」
ジルが苦笑いを浮かべて言うと、
「クロスとはお似合いなんじゃないのか」
エリトラは苦笑いを浮かべながら言い、
「クー」
フィルはエリトラの言葉に頷いた後、
「クー」
エリトラとジルに頭を下げてセフィの後を追いかけて行く。
「……フィルが1番大人なのか?」
エリトラはフィルを見て言うと、
「そうかも知れないね」
ジルは苦笑いを浮かべたまま頷く。