story.44
「クロスさん、知り合いですか?」
セフィが2人を交互に見た後、クロスに向かい聞くと、
「いや、話しに聞いた事があるだけだ。四大元素を司る妖精を使いこなす天才妖精師。数年前まで続けられていた隣国との戦争を終結させるのに1枚噛んでいるって話しも聞いた事がある」
クロスはエリトラの事をセフィに説明する。
「凄い人なんですね」
セフィは感心したような声をあげて、エリトラを見るが、
「凄くなんてない。ただの人殺しだ」
エリトラはセフィの言葉が目障りなのか不機嫌そうな口調で言い、
「それで、女連れの色男さんは道端で何をしてるんだ?」
エリトラはあまり自分の事を話されたくなかったのか、仕返しのつもりなのか皮肉を込めながらクロスに聞くと、
「成り行きで、こいつを冒険者の店に連れて行くところだ」
クロスはエリトラの皮肉に反応する事なく、ありのままを話す。
「そうか……」
その言葉にエリトラは少し考えるような素振りをすると、
「俺もその店に連れて行け」
クロスに向かい言う。
「なぜだ?」
クロスはエリトラが同行したがる理由がわからずに聞き返すと、
「この街には初めてきたんでな。なじみの店がない。クロス=ブラッドほどの男が拠点にしている店なら、優秀な冒険者もそろっているだろ」
エリトラはあっさりと答え、
「あの、でも、エリトラさんは凄い人なんですよね? 優秀な冒険者を……」
セフィは意味がわからないのかエリトラに説明を求めようとするが、
「あまりバカみたいな質問をするな」
「クー」
クロスは疲れたようなため息を吐くと、流石にフィルも呆れたような声を出し、
「俺は後列だからな。前で守ってくれる奴がいないと懐に入り込まれたら死ぬだけだ」
エリトラはセフィの様子に呆れたように言い放ち、
「それで、頼めるか?」
セフィの事を軽く無視し、クロスに確認すると、
「……好きにしろ」
クロスは1人増えるのも変わらないと判断したのかそう言うと、1人で歩き出す。