story.43
「クロスさん、待ってくださいよぉ」
セフィは先を歩くクロスを呼ぶが、クロスはその足を緩める事はなく、
「……早くしろ」
セフィのお守りを早く終わらせたいようで先を急いでいる。
「ま、待ってください……」
セフィはついに限界がきたようで、その場にへたり込んでしまうと、
「クー?」
フィルは心配そうにセフィの顔を覗き込み、
「クー」
クロスを非難するように声をあげる。
「……俺が悪いのかよ」
クロスはフィルの声にそう呟くと、
「お前は俺を巻き込んで何が楽しいんだ?」
セフィの元まで戻り、セフィに今までかけられた迷惑を非難するようにそう言うが、
「そんな事を言われても」
セフィはクロスの顔を見上げて泣き出しそうな声で言う。
「……はぁ」
クロスはセフィの様子に頭を押さえながらため息を吐いたところで、
「道の真ん中で座り込むな」
クロスとセフィのやりとりが通行の邪魔なようで男がセフィに向かい言う。
「す、すいません!?」
セフィはその言葉に驚いたのか急いで立ち上がると、
(あれ?)
男の顔を見て、男の右目が光を失っている事に気づく。
「……なんだ?」
セフィが自分の顔を見て固まってしまったのを見て、男は不機嫌そうにセフィに向かい言うと、
「あの、もしかして右目が見えないんですか?」
セフィは男に右目の事を聞く。
「……会ったばかりの人間に言う義理は無い」
男はセフィの言葉に少しイラついているのか不機嫌な声で言った時、
「……エリトラ=ハルハザードか?」
クロスはその男の容姿に心当たりがあったようで男の名前を呼ぶと、
「なぜ、俺の名前を……」
クロスにエリトラと呼ばれた男はクロスの顔を見て、
「クロス=ブラッドか。お前に名前を知られるなんて、俺も有名になったものだな」
エリトラは意味ありげな表情で笑う。