story.39
(さてと……)
クロスは野盗の報告を終え、野盗から奪った戦利品を処分しようと宿場町を移動していると、
「ん? クロス?」
クロスの名前を呼ぶ少女の声が聞こえるが、
(……この声は? 無視だな)
クロスは自分の名前を呼んだ声に心当たりがあったようだが、関わり合いたくないと思ったようで聞こえないふりをして歩き出す。
「ちょっと、クロス、聞こえてんだろ?」
クロスの名前を呼んだ少女はクロスの行動を見て、クロスだと確信を持ったようでクロスに向かい歩いてくるなり、
「お姉さんを無視するなんて、いい度胸じゃない?」
丸い眼鏡と艶のある黒髪が印象的な少女がクロスの腕をつかみ言う。
「……何のようだ?」
クロスは自分の腕を捕まえた少女を見ると厄介な人間に捕まったと思っているのか、不機嫌そうに少女に向かい言うと、
「……あんたは相変わらずね」
少女はクロスから手を離すとクロスの対応に疲れたようなため息を吐き、
「こんなところで何をしてるのよ?」
クロスの相変わらずの態度に頭を押さえながら言うが、
「お前に話す義理はねぇよ」
クロスは冷たくそう言い、歩き出そうとするが、
「いたいた」
「あの人ですか?」
クロスに声をかけた少女を探していたようで、セフィとホックがクロスと少女に向かって歩いてくる。
「あれ? クロスさん?」
セフィはクロスに気づきクロスの名前を呼ぶと、
「まさか、あんたにこんな可愛い娘の知り合いがいるなんてね」
少女は自分の眼鏡をクイッとあげるとセフィの事をクロスに詳しく聞こうとする。