story.38
「……」
セフィが頭をさげるのをクロスは無表情なまま眺めていると、
「お前にもあれくらいの礼儀があればなぁ」
ホックはからかうようにクロスに向かい言うが、
「そんなものを持ち合わす気はない」
クロスは不機嫌そうに言うと、
「すぐに出るのか?」
ホックに向かい出発時間を確認する。
「お前も補充するものがあるだろ。それに詰め所には野盗の報告はしておいたが、お前からの報告も必要だろ。それくらいの時間は取れると思う」
「そうか」
ホックの言葉にクロスは頷くと、
「少し出てくる」
そう言い、歩き出す。
「クロスさん、待ってください!?」
セフィはクロスが歩いて行くのを見て、自分もついて行こうと思ったのか、慌ててクロスの名前を呼ぶが、
「……ついてくるな」
クロスはセフィの相手をするのが面倒なようでそう言い、1人で歩いて行く。
「クロスさん……」
セフィはクロスの背中を見つめていると、
「あいつは仕方ないな」
「クー」
ホックはクロスの様子に苦笑いを浮かべながら言うと、フィルもホックと同じ意見のようで頷く。
「セフィは買うものは無いのか?」
クロスの背中を見つめているセフィにホックが声をかけると、
「えーと、そうですね。買うものは無いんですけど……」
セフィはホックの言葉に何かを考えるような素振りをした後、
「これを買い取ってくれるお店ってありますか?」
クロスに売った方が良いと言われた剣を見せる。
「これをか?」
「はい。クロスさんに私には重たいだろって言われまして」
「ん〜、確かにこれはセフィには重そうだな……」
ホックはクロスと同じ意見のようだが、何か考えがあるのか首を傾げている。
「売れないですか?」
ホックの態度にセフィが聞き返すと、
「ここじゃ、その剣に見合った値段がつくかな? とな」
ホックはセフィの剣を良品だと判断したようで今は売らない方が良いと考えているようだが、
「……ちょっと待てよ。あいつがいたな」
何かを思い出したようで、
「どうかしましたか?」
ホックの様子にセフィが聞くと、
「前にクロスに紹介された冒険者に行商をやってる奴がいてな。昨日、同じ宿に泊まってたんだ。そいつなら買ってくれるかな? と思ったんだがあたってみるか?」
ホックは心当たりを思い出したようでセフィに向かい確認せると、
「お願いします」
セフィは頭をさげ、ホックとともにその冒険者を探しに向かう。




