story.34
「食わないのか?」
クロスは仕留めたクマを手慣れた手つきで解体するとその肉を鍋に入れ、採ってきたであろうキノコや野草と一緒に煮込んだものをセフィに渡すが、
「………」
セフィは先ほど目の前で行われた事が衝撃的だったようで、
「どうして、そんなに落ち着いているんですか? 私達、さっき、襲われたんですよ。その襲ってきたものをすぐに食べれるわけないじゃないですか?」
セフィはクロスに向かい言うが、
「クー」
体は正直でセフィの腹は食料を求めて泣き声をあげる。
「……いただきます」
セフィは顔を真っ赤にすると自分の体から求められたものを摂取しようとクロスが作った料理に口をつけると、
「……美味しい」
見た目が極端に悪く、どこか食えたものではないと思っていたものが予想以上に美味しかったようで、セフィは驚きの声をあげるが、
「そうか」
クロスは笑顔を見せる事なく頷く。
「……あの」
セフィはクロスの様子に何か不思議に思ったようで、クロスに声をかけると、
「どうして、私を助けてくれたんですか? 私は足手まといだし、神の愛を信じていないクロスさんにとって、私なんかを助けても……」
自分を助けて、食事まで用意してくれたクロスの事を不思議に思ったようでそう聞く。
「……別に、俺が世話になった人の教えだから仕方なくだ」
クロスはあまり言いたくないようで、
「くだらない事を言ってる暇があったら、食ってさっさと寝ろ。フィルと一緒で見張りくらいして貰うからな」
不機嫌そうに話を切るが、
「あの、その前にどこかで水浴びとかってできないですかね?」
セフィが何を思ったのかそんな事を言う。
「……お前、やっぱり、バカだろ」
クロスはセフィの言葉にため息を吐きながら言うが、
「でも、さすがに……」
セフィはクロスに助けて貰った時に野盗の血を全身に浴びているせいか拭いたとはいえ気持ち悪いようでそう言うと、
「……少し奥に湧き水が湧いていた。そこで浴びてこい。フィル、お前もついて行け」
クロスは頭を押さえながら言い、
「ありがとうございます。フィルちゃん」
セフィはフィルを抱きしめ、クロスに礼を言った後、
「覗かないでくださいね」
クロスに向かい言うと、
「覗かねえよ」
クロスは疲れたようなため息を吐く。