story.32
「火を点けろって言われても……」
セフィはクロスの言葉にどうして良いのかわからないような表情をすると、
「クー」
フィルはセフィの手の中から抜け出し、
「クー」
得意げに炎を吹く。
「フィルちゃん、すごいです」
セフィは手を叩き、フィルを誉めると、
「クー♪」
フィルはセフィの様子に少し照れくさそうに頭をかき、
「クー」
街道に落ちている枯れ木や枯れ葉を集め始める。
「フィルちゃん、待ってください」
セフィはフィルとともに火を点ける枯れ木を集めて、フィルを炎で火を点けるとクロスを待っている。
(……クロスさんはどこまで行ったんでしょうか?)
クロスが出て行ってから、だいぶ時間もたったがクロスは帰ってこない。
(まさか、何かあったり……)
セフィはクロスが帰ってこない事を心配しはじめると、
「ガサガサ」
近くから何かがこちらに近づいてくる音がする。
「クロスさん?」
セフィはその音でクロスが帰ってきたと思い、音のした方に近づこうとするが、
「グー」
フィルはその音から何かを判断したようで威嚇するような唸り声をあげる。
「フィルちゃん?」
セフィはフィルの様子にクロスではないと気づいたようで、
(……何がくるんでしょうか?)
近づいてくるものを見極めようと少し腰が引けながらも剣を構える。
「ぐるるる」
近づいてくるものをは唸り声を上げながら、こちらに近づいてくる。
その唸り声は明らかに肉食獣の唸り声であり、
(どうしよう?)
セフィはその声を聞き、腰を引いたまま逃げ出したい思いにとらわれていると、
「ブン」
その肉食獣はセフィを見て、獲物を見つけたと判断したようで鋭い爪がついた手をセフィに向かい振り下ろす。