story.31
「……」
その音にその場がしばらく固まった後、
「わ、私じゃないですから」
セフィは顔を赤くしながら口早に否定するが、
「……この場に俺以外に人がいればそれも通用したかも知れないな」
クロスは呆れたように言うと、
「でも、フィルちゃんとか」
それでも認めたくないようで、セフィはフィルの名を出すが、
「クー?」
フィルはセフィの腕の中でセフィがどうして慌てているのかわからずに首を傾げている。
「言いたいなら言ってろ」
クロスはすでにどうでも良いようでそう言うが、
「だから、私ではありません!!」
セフィには大問題のようで全力で否定した時、
「ぐるるるるる」
何かが唸っているような音がする。
「な、何ですか?」
セフィはその音に何が起きたかわからずに戸惑っているが、
「最初の音がお前じゃないと言うなら、この音がお前の腹の音だな」
クロスは先ほどの音が腹の虫の音だと言い切り、
「クー」
フィルがセフィの腕の中で、少し恥ずかしそうにしている。
「……最初のが私の音です」
フィルの腹の虫の音を聞いて、セフィは顔を赤くして、自分の腹の虫が鳴いた事を認めると、
「先に進むのは無理か?」
クロスはセフィとフィルを見て言い、
「一先ずは飯にしたいが……」
クロスは自分の荷物を物色するが、3人分までの材料はないようで、
「……どうするかな?」
何かを考え始める。
「どうしたんですか?」
クロスの様子にセフィが声をかけると、
「俺とフィルの分はあるがお前の分はないから、どうするかな? と」
クロスの言葉に、
「私は食べなくても大丈夫ですよ」
セフィは根拠なく言うが、
「くだらない事を言う暇があったら、どうするか考えろ」
クロスは表情も変えずに言い、
「フィルと一緒に火でも点けてろ。俺は何か探してくる」
クロスは日が落ちているなか、街道から離れ、食材を探しに歩き出す。