story.30
「まぁ、わかってはいたが……」
街道に戻るとすでに日はすっかりと落ちており、
「おい」
クロスはセフィを呼ぶと、
「お前、野宿の準備なんて……知るわけないな」
セフィの様子にクロスは頭を押さえて言う。
「どうして、決めつけるんですか?」
セフィはクロスの言葉に少し頬を膨らませるが、
「お前、ほとんど手ぶらだろ」
クロスは呆れているのか、ため息を吐く。
「こ、これは襲われたからであって、何も準備して無いわけではないです」
セフィは反論しようとするが、クロスの中ではすでにセフィは常識のない初心者の冒険者で固まっており、
「まぁ、ここからなら、3時間くらいか」
セフィを無視して、クロスには通りなれた街道の位置を確認すると、
(ホックの事だ。一晩くらいは待ってくれているはずだし、今から追えば追いつくな)
ホック達に追いつけると計算したようで、
「俺とフィルは先に行くが……」
クロスはこのまま街道を進む事を伝えようとするが、
「クー?」
フィルはすでにセフィと一緒にいる事を決めているようでセフィに抱きしめられ、楽しそうにしている。
「……フィル」
クロスはフィルの様子にため息を吐き、フィルを呼ぶが、
「クー」
フィルはセフィとともにいると言う。
「おい。お前、まだ、歩けるか?」
クロスはこのまま進めば、今日中に宿場町に着き、上手くいけばホック達とも合流できると考えているせいか、セフィに向かいまだ体力があるかを確認した時、
「クー」
フィルの言葉とは異なる音が響く。