story.29
「何がですか?」
セフィはクロスの様子に少しムッとした感じで聞き返すが、
「一先ずは後にするぞ。この場所で夜を迎える気にはならないから、街道に戻るぞ」
クロスは日が傾いてきているのを気にしているのか、手にしていたスコップを地面に立て、セフィに向かい言い、
「フィル、終わったか?」
フィルに頼んでいた事を終わったか確認すると、
「クー♪」
フィルはクロスが斬り捨てた野盗の持ち物をしっかりと集めていたようでひとまとめにしている。
「これは使えそうだな。後は……」
クロスがフィルが集めた戦利品を物色しはじめると、
「クロスさん、あなたは何をしているのですか?」
死者の持ち物を物色しているクロスにセフィは批判するように言うが、
「これは冒険者の正当な収入だ。割り切れないなら、お前の信じる教会に帰れ」
クロスはセフィの言葉を聞き入れる事なく、作業を続けて行くと、
「……お前、武器はどうした?」
クロスはセフィが縛られていたせいか、丸腰になっていた事を思い出したようでセフィに聞く。
「縛られる時に、取られました」
セフィはそう答えると、
「……お前は本当に冒険者か?」
クロスは呆れたように言い、
「それで、武器はどうするつもりだ? そのままで歩くつもりか?」
クロスがセフィにこれ以降、助ける義理はないと言う意味を込めて言う。
「そこに私の剣があります」
セフィはクロスが物色している物の中にある剣を指差し、
「……これか?」
クロスはセフィが指差した剣を持ち上げると、
「ん?」
クロスはその剣の重さに首を傾げ、
「お前、これを使っていたのか? 重くないか?」
クロスは剣の重さが気になったようで、セフィに向かい聞く。
「重いとは思いますが、お父様が冒険者になると言ったら、買ってくださいましたから」
セフィが当たり前のように答えると、
「……お前、本当に冒険者になるつもりあるのか? 自分の腕力に合わない物を使っていたら死ぬぞ」
クロスはセフィの常識の無さに呆れたようなため息を吐き、
「お前はこいつを使え」
戦利品の中から、セフィの腕力に合いそうな剣を渡す。
「これは街についてから、売れば良い金になるだろ」
クロスはセフィの剣を返すと、
「他に使えそうなものはないな。俺の剣はボロボロになっちまったし……」
クロスは戦利品の中には自分に合いそうな剣がなかったようで、多くの野盗を斬り捨て刃が欠けている剣を見た後、
「……仕方ない。あいつのところに行くか」
行き先を決めたようで、
「日が落ちる前に街道に戻るぞ」
フィルに向かい言うと、歩き始め、
「クー」
フィルは頷き、クロスの後をついて行き、
「ちょっと待ってください!?」
セフィはクロスとフィルの背中を追いかける。