story.2
(ここの町じゃたいした仕事は無いか……護衛が数件と新しい遺跡の調査……微妙だな)
クロスは掲示板を見ながら次の仕事をどうするか考えているが、
(……別にこの町で探す必要もないか)
自分の力量に見合う依頼もないようで他の町で仕事を探そうと決めた時、
「坊主、飯が出来たぞ」
店主がクロスの飯が出来上がったとクロスを呼ぶ。
「あぁ」
クロスはカウンターに戻り料理を受け取り、食べ始めると、
「良い依頼は見つかったか?」
店主はクロスに向かい聞くが、
「……ない」
クロスは表情を変える事なく答え、
「まぁ、こんな片田舎じゃ、お前の力量に合う依頼はねぇな」
店主は苦笑いを浮かべていると、
「カラーン」
店のドアが開き1組のパーティーが入って来る。
「お、クロスじゃないか。久しぶりだな。親父、酒と食いもんは……クロスと一緒のをくれ」
入ってきたパーティーのリーダーらしき男がクロスを見つけると自分のパーティーメンバーに断りをいれクロスの隣に座る。
「……久しぶりだな。ホック」
クロスは久しぶりの再会だと言うのに笑顔を見せるわけでもなく面倒そうに挨拶をすると、ホックと呼ばれた男は相変わらずのクロスの様子に店主と顔を見合わせて苦笑いを浮かべた後、
「帰って来た事を……」
クロスにこの町に帰ってきた事を知らせないといけない相手に会いに行ったかと聞こうとするが、
「言って無い」
クロスはホックの言葉を遮り答え、
「挨拶に……」
「考えておく」
ホックが続けて話をしようとする言葉にはクロスは触れて欲しくないのか話を切る。
「……ガキ」
クロスの様子にホックは呆れたようなため息を吐くと、
「悪かったな」
クロスは機嫌が悪そうに答え、
「まぁ、それがお前らしいがな」
そんなクロスの反応を見てホックはクロスの頭を撫でながら豪快に笑う。
「頭撫でるんじゃねぇ」
クロスはホックの手を払おうとするが、
「嫌だね♪」
ホックはクロスの言葉を聞き入れる事なく続ける。
「おい。そろそろ止めてやれ」
親父は2人の様子に呆れたようにため息を吐いた後、仲裁するとホックに飯を渡し、ホックは飯を食い始める。
「そういえば、次の仕事って決まったのか?」
ホックはクロスに仕事を取ったかと聞くと、
「良い仕事もないし、しばらくゆっくりしたら、他の町で探す」
クロスはこの町では仕事を受ける必要はないと答えるが、
「それなら、護衛の仕事を受けるんだけど一緒にやらないか?」
ホックは何かを思いついたようで、クロスを自分達と一緒の依頼を受けないかと誘う。
「……断る。今、言っただろ? この町で俺が受ける仕事はない」
クロスはホックの誘いを断るが、
「そういうな。今のメンバーは駆け出しが多くてな。一緒の間に鍛えて欲しいんだ」
ホックは後輩の冒険者の育成を手伝って欲しいと言う。
「……お守りはゴメンだ」
クロスは使えないヤツらの相手はしたくないと言うが、
「そういうな。昔馴染みからの頼みだろ?」
ホックは諦める事なく、もう1度クロスを誘うと、
「……考えておく」
クロスは受ける気はなさそうだが、話を切るために当たり障りのない答えを出す。
「良い答えを待ってるぞ」
ホックはクロスの考えがわかっているようで苦笑いを浮かべて言った後、最近の状況を話しながら飯を食べる。