story.28
「フィル」
クロスはもう1度、フィルの名を呼ぶが、フィルはクロスを何か言いたげな目で見て、
「クー」
声をあげると、
「……わかったよ。弔ってやれと言うんだろ」
クロスはフィルの声の意味を理解しているようでそう言い、
「クー」
フィルはクロスの言葉に大きく頷き、
「アジトだし、スコップくらいあるか?」
クロスはアジトを物色し、自分が奪った命を弔う墓のようなものを作って行く。
「そこで何もしないなら、消えろ」
セフィはクロスが奪った命に対し、彼女の信じている神への教えなのか、手を合わせ何かを祈っているように見え、クロスに対する反抗心もあるのかクロスの言葉を聞き入れる事なく、熱心に神に祈りをささげている。
「……勝手にしろ」
クロスはそう言うと、セフィを無視し、墓を作り続ける。
「あの」
セフィが何かを思ったのかクロスに声をかけ、
「……なんだ?」
クロスは面倒そうに聞き返すと、
「どうして、あの人は神を信じる事が出来なくなったんでしょう?」
セフィは男の言葉が信じられないようで、クロスに向かい質問する。
「さっきの言葉の通りなんだろ。信じる価値を見いだせなくなった。自分達の行動に疑問を持った。自分達の罪を悟った」
クロスはくだらない事を聞くなと言った感じで答えると、
「だから、それがわからないんです!!」
セフィは声を荒げるが、
「すいません……」
クロスに対して声を荒げるのは筋違いとわかっているようでクロスに向かい謝る。
「人の考える事なんて、それぞれ違うんだ。それを1つの考えで縛ろうとする事自体が間違ってるんだよ」
クロスは何かを思い出しているようでそう言うと、
「お前は、教会の正義の名のもとに殺された人間がどれだけいるか、考えた事はあるか?」
セフィに向かい聞くが、
「教会が人の命を奪う事はありません」
セフィは本当にクロスの質問の意味がわからないようでキッパリと言い切る。
「それなら、お前は教会が行っている邪教徒討伐をなんだと思っている?」
クロスは質問を変えると、
「邪教を信仰している人達にいかに神の愛が素晴らしいか教会の教えを伝えるためのものです」
セフィは邪教徒討伐で実際に行われている事を本当に知らないようでクロスの質問の意味がわからないと言った表情で答え、
「……お前は本当に何も知らないんだな」
クロスは呆れたようなため息を吐く。