story.1
少年と小さなドラゴンが道を歩いている。
(……久しぶりだな)
少年は久しぶりにこの小さな町に帰ってきたようで、宿泊施設を兼任している冒険者達が集まる店のドアを開ける。
「カラーン」
ドアを開けるとかきいれ時には少し早いようであまり混んではいないように見える。
(……)
少年は他の客には目もくれず、カウンターに座ると、
「坊主、久しぶりじゃねぇか? どこまで行ってた?」
店主は少年を見て懐かしい顔をみたようで声をかけるが、
「……王都まで」
少年は店主の言葉に笑顔を見せる事もなく愛想もなく答える。
「王都か? どんな仕事だったんだ?」
そんな少年の様子に店主はなれているようで特に気にした様子もなく少年に向かい聞くと、
「……護衛と使えない新人のお守り」
少年はメニューを広げながら、仕事があまり上手くいかなかったのか不機嫌そうに言い、
「まぁ、お前と対等に仕事を出来る人間はこの辺だと数人しかいないだろ」
店主は他の冒険者が少年に足を引っ張られていたと感じたようで苦笑いを浮かべ、
「だけど、依頼は成功したんだろ?」
依頼の正否を聞くと、
「……まぁな」
少年は当たり前の事を聞くなと言った様子で不機嫌そうに答える。
少年の名前はクロス=ブラッドと言い、冒険者を始めてもう7年になる。
この辺りのモンスターは大人しく滅多に人間を襲う事は無く、この町での冒険者の仕事は近辺の町までの護衛といった簡単な仕事ばかりで少年の実力にあった仕事はなかなかない。
「飯にはまだ早いが何か食うか?」
店主はクロスの様子に苦笑いを浮かべて言うと、
「……量のあるものとフィルにはいつもの」
クロスは自分の飯と一緒に店に入ってきた小さなドラゴンの飯を頼む。
「ミルクは飲むか?」
「飲む」
店主はクロスをからかうように言うが、クロスはその質問にたいしてはあまり反応する事なく答えると、クロスの様子に店主は苦笑いを浮かべ、
「相変わらず酒はダメか?」
クロスに聞き返すが、
「飲む必要が無い。名前も売れてくると名を上げようとバカが来るから潰れる訳にもいかないからな」
自分が酒に弱い事と周りの相手からの自分の評価を理解しているようでそう言い、
「違いない」
バカが来るから潰れる訳にもいかないか店主は豪快に笑いながら料理を作り始める。
(……仕事見てくるか?)
クロスは店主の調理している姿を見ているのが暇だったようで、新しい仕事の情報を探しに掲示板に向かう。