story.18
「一先ず、休憩のふり?」
ホックは苦笑いを浮かべてクロスに向かい言うと、
「それで、行くのか?」
クロスは反対する気はなさそうな様子で、作戦を煮詰めていこうとする。
「この状態じゃ、馬車を急がせられないだろ?」
ホックはクロスが反対意見をださないせいか、苦笑いを浮かべたまま、作戦を決定し、
「それじゃあ、一先ず休憩だ」
囲んでいる襲撃者にも聞こえるように言った後、馬車を止めて休憩の準備を始める。
「……行くぞ。フィル」
「クー♪」
ホック達が休憩の準備を始めている中、クロスは囲みの隙を突き、馬車から離れると、
(……精霊使いはあそこか?)
クロスは囲んでいる襲撃者を確認し、相手の動きを封じる魔法を使う精霊使いを探して行く。
(あそこだな)
クロスは魔法の詠唱を始めている男を見つけると、
(……依頼者はホックが守るだろうから大丈夫だろ。後は……)
2日間、一緒にいたメンバーの顔を思い浮かべながら、
(あいつらが死なないためにはタイミングは大事だな)
不意打ちを行うタイミングを計っていき、
(……あっちの指示はホックに任せれば問題ないからな)
クロスはニヤリと笑うと、
「フィル、頼むぞ」
「クー」
フィルの名を呼ぶ。
フィルはクロスの考えが理解出来ているのか返事をすると、囲みの一番薄いところの後ろに回り込み。
「クー」
炎を吐く。
それが開戦の合図となる。
「うわああ!?」
フィルに炎を吐かれた相手は突如起こった事にわけがわからないようで、自分に燃え移っている炎を消そうと悲鳴をあげ、地面に転がっている。
その状況に驚いたのは襲撃者の方である。
こんな人気のないところで休憩を取ろうとするバカな旅人と警戒もしない護衛らしき人間達。
囲みは完璧に思えた。
そのはずなのに、仲間が燃えている。
それに驚いている中、
獲物はホックの指示で完璧な防御に徹し始めている。
その上を更なる恐怖が襲う。
「……」
クロスは音もなく、襲撃者の背後に回り込むと、
「何!?」
精霊使いらしき男を一振りで斬り捨て、
「……次」
流れるようにそこにいた襲撃者を斬り伏せて行く。