story.16
「……あぁ」
その言葉にホックは頷き、
「依頼内容としては武器商人の護衛。隣町までの簡単な仕事だけどな。この辺は割と安全だけど……」
ホックが言葉を濁すのを見て、
「……最近は野盗が出るか?」
クロスはホックの言葉の意味を理解したようでそう聞き返す。
「あぁ。聞いているのか?」
ホックはクロスの言葉に少し驚いたような表情をすると、
「噂程度にな。飢饉にやられた村の生き残りだとか、他の場所を荒らしまわった野盗が討伐対象になり、この辺に身を隠しているんじゃないかとかな」
クロスは当たり前のように答える。
「流石に情報には敏感だな」
ホックはしばらく、この町にいなかったはずなのに自分と同様の情報を持っているクロスに感心したように言う。
「……俺は1人だからな。きちんとした情報を手に入れなければ死ぬだけだ」
クロスがそう答えるのを見て、
「そう思うなら、周りを頼れよ」
ホックは苦笑いを浮かべるが、
「……俺に深入りすると、そいつに危険が及ぶだろ」
クロスは自分から人との距離をとりたいようでそう答える。
「1人でいようとするのは、『父親を殺した奴への復讐のため』か?」
ホックは真剣な表情でそう言うと、
「お前の父親はそれを喜ぶのかな?」
クロスに向かい疑問を投げかける。
「……そんな事はお前に言われるまでもなくわかっている……」
クロスはその言葉に顔を少し歪めるがすぐにいつもの表情戻るが、
「……それでも俺には復讐しかないから」
クロスはホックに聞こえないように呟く。
「ホックさん、そろそろ行きましょう」
クロスの心情など知るよしもなく、ホックのパーティーのメンバーがホックに向かい声をかけると、
「依頼者もきたみたいだし、行くか?」
ホックはクロスに出発しても良いか聞き、
「依頼者と顔合わせは良いのか?」
クロスはパーティーのリーダーであるホックが依頼主に挨拶をしないのを疑問に思い聞き返すが、
「俺はそっちは不得意だしな。出来る奴に任せるさ」
ホックは苦笑いを浮かべて答えると、
「……まぁ、そうだな」
クロスはホックとは付き合いが長いせいか納得がいく事があるようで頷き、
「フィル」
フィルの名を呼び、仕事につく。