story.11
「……ったく、親父も何が楽しいんだよ」
クロスはセフィの様子を見て、ため息を吐きながら店主に聞くと、
「坊主が同年代といるのが珍しいからな。少しからかいたくなった♪」
店主はクロスが同年代と一緒にいる姿が珍しいのでからかったと言う。
「……くだらねぇ事をするなよ」
店主の言葉にクロスはもう1度、ため息を吐くと、
「それでどうしたんだ? 坊主が請け負うような依頼はこの町にはねぇ」
店主はクロスが請けるような依頼はないと言うが、何かを考え、
「……事も無いな」
クロスの力量に合う仕事に心当たりがあったようでそう言う。
「どういう依頼だ?」
クロスは依頼があることに驚いたように聞き返すと、
「請けるのか?」
店主はクロスに確認するように聞き返すが、
「内容次第だな」
クロスは依頼にすぐに飛びつく事はせず、内容の確認を行う。
「まぁ、そうだな……やっぱり止めだ」
店主はクロスに依頼内容を話そうとし、依頼のメモに目を通すがクロスには任せられないと判断したのか話を止める。
「どうしてだ?」
店主の態度にクロスが聞き返すと、
「坊主、今は1人で動いてるだろ?」
店主はクロスのパーティーを組もうとしない事を確認し、
「……足手まといはいらないからな」
クロスはパーティーを組む利点はないと言い切る。
「俺が言う事でも無いが……少しは人を信じたらどうだ? あいつらが冒険者を辞めてからお前はここじゃホックくらいとしか仕事をしないだろ」
店主はため息を吐きながら、クロスをいさめるように言うが、
「俺の近くにいたって良い事なんてないだろ」
クロスは今の状況を改める気はないようで関係なさそうに言う。
「……お前はうちにくる奴らじゃトップクラスなんだから後輩の指導もして欲しいんだよ」
クロスの様子に店主は店の事を考え、後輩の指導をして欲しいと言うが、
「それはホックに当たれ……俺は人にものを教えるように出来てない」
クロスは自分には向かないと答える。
「そんな事はないだろ。それならあいつが昨日の仕事に誘う訳がねぇ」
店主はクロスの答えに引き下がらずに言うが、
「……あいつは物好きなだけだ。それで、内容は?」
クロスは話を戻そうと依頼内容を聞く。
「1人じゃさせられねぇよ」
しかし、店主はクロスにはこの依頼は任せられないと言うが、
「なら聞くが、俺以外でその依頼を任せれる奴がここにいるのか?」
クロスは納得がいかないのか店主に聞き返すと、
「……」
店主はクロスの言葉に何も答える事が出来ず、その沈黙はクロスの言葉を肯定している事がわかる。