story.100
「……セフィとエリスは何をしてるんだ?」
「クー?」
後ろからセフィとエリスの様子を見て、エリトラは首を傾げるとエリトラの護衛に残ったフィルも首を傾げる。
「まぁ、俺は俺の仕事をするだけか」
「クー」
エリトラは前の2人の様子も気になるが、自分は自分の仕事に徹しないとあの巨大蜘蛛を倒せないと感じ取っているようでため息を吐く。
「……フィル、俺は今までより、長い時間、魔法を詠唱しないといけないから頼むぞ」
「クー」
エリトラは魔法の詠唱中に無防備になるため、フィルに向かい言うと、フィルは炎を吹いて見せようとするが、相変わらずガス欠のようで『プスプス』と小さな煙が上がり、フィルは恥ずかしそうに頭を掻く。
「……そりゃそうだな。これを使ってくれ」
「クー」
エリトラはフィルの様子に苦笑いを浮かべるとフィルに小瓶を渡す。フィルはエリトラから渡された小瓶を見てそれを一気に飲み干すと、
「クー」
「いや、魔力の無駄使いは止めてくれ」
身体に力が戻ったのを実感したのか、大きな炎を吹き、エリトラはフィルの様子にため息を吐く。
「それじゃあ、フィル、頼むぞ」
「クー」
改めて、エリトラが言うとフィルは任せろと言いたげに自分の胸を叩き、こちらに飛んでくる糸を炎で燃やしながらエリトラの魔法詠唱の時間を稼いでいく。
(……ちっ。やっぱりこの剣じゃ無理か)
クロスは巨大蜘蛛の攻撃と後ろからの援護射撃を交わしながら、攻撃を続けて行くが、剣はクロスの手になじんでいないせいか巨大蜘蛛に致命傷を与えるような傷はつけられない。
(まぁ、こいつさえ倒せば後はどうにでもなるだろうし、最後までもてよ)
クロスは剣を持つ両手に力を込めると、力強く地面を蹴り、渾身の力を込めて巨大蜘蛛の前足を斬り裂く。
「ぎゃあぁ!?」
巨大蜘蛛はクロスに前足を切られ、悲鳴らしい声を上げながら、バランスを崩し前のめりに倒れ込むと辺り1面に土煙が上がる。
(……これで動きは制限されたな。後はエリトラの魔法を待ちながら、削って行くか)
巨大蜘蛛の動きを制限した事でクロスは一息吐くが、彼は緊張感を解く事はなく、剣を構え、
(……とりあえずはもう1本の前足をどうにかすれば大部楽になるな)
次の目標を決めた瞬間、
「!?」
巨大蜘蛛から糸が吐き出され、クロスは当然、それを交わすが、
「セフィちゃん!?」
「ふえっ!?」
糸の先にはセフィが立っており、セフィの身体に糸が絡みつくと巨大蜘蛛は一気に糸を引っ張りセフィの身体は空中に跳ね上がり巨大蜘蛛まで一直線で引き寄せられて行く。
(……ちっ、あのバカ)
「クロスくん、避けてください!!」
セフィの様子にクロスは舌打ちをすると糸を斬り裂こうとするが、エリスの声が響き、エリスから巨大蜘蛛の口に向かい火球が飛ぶ。
「ぐぎゃああ!?」
「ふぇぇぇ!?」
クロスはエリスの声に直ぐに反応し、ギリギリまで火球を引きつけたところで火球を交わすとクロスの影に隠れていた火球は巨大蜘蛛の視角から外れていたようで、巨大蜘蛛の顔面に直撃し、セフィは巨大蜘蛛に到着する前に火球が直撃したため、糸が焼き切れ地面を勢いよく転がって行くと、
「……開け」
エリトラの魔法の詠唱が終わっようで、巨大蜘蛛の後ろに巨大蜘蛛を飲み込む位のサイズの歪みが現れその歪みから巨大な手が這い出し、巨大蜘蛛を歪みの中に引きずりこんで行く。
「クロス、今だ」
「……これで終わりだ」
エリトラは巨大蜘蛛の動きを完全に封じたため、クロスにとどめをさせと叫ぶと、クロスはすでに次の行動に動いており、渾身の力を込めた剣を巨大蜘蛛の首筋に振り下ろす。