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ハンバーグはハンバーグ  作者: 風待望
新人ちゃん

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6/12

はじめてのハンバーグ

「ところでドッグタグを貰ってたってことは新人ちゃんだよね!じゃあお祝いにハンバーグを奢ってあげる!ついてきて!」


そう言われてから、手を引かれ気づけば食堂のテーブルに座っていた。


周りを見回す。


探索者たちが行き交い、笑い声が響く。

カウンターでは料理人が忙しそうに動いている。

掲示板には何やら情報が貼られている。


賑やかな、日常の音。


「ハンバーグ定食二つ!」


風使いちゃんが元気よく注文する。


「はーい、少々お待ちくださーい」


料理人が答える。


テーブルを挟んで向かい合う二人。

風使いちゃんは、既にフォークとナイフに手を伸ばしかけている。


「新人ちゃん、ハンバーグ好き?」


風使いちゃんが聞く。


新人ちゃんは、少し考えるように首を傾げた。


「...わかりません。食べたことが、ないかもしれません」


「え!?マジで!?」


風使いちゃんの目が輝く。


「じゃあ今日は記念日だね!初ハンバーグ記念日!」


「記念日...」


新人ちゃんは、その言葉を小さく繰り返した。


「そうだよ!人生で初めてのハンバーグなんて、超特別じゃん!」


風使いちゃんは、嬉しそうに笑う。


「楽しみにしててね!絶対おいしいから!」


「...はい」


新人ちゃんは、小さく頷いた。


「あ、ちょっとトイレ行ってくる!新人ちゃん、ここで待ってて!」


「はい」


風使いちゃんは、ぱたぱたと食堂の奥へ消えていった。


ーー


新人ちゃんは、一人、席に座っていた。


食堂の喧騒。

探索者たちの笑い声。

料理の香り。


新人ちゃんは、椅子に座り直し、テーブルに置かれた水のグラスを手に取った。


一口、飲む。


「おまたせー!」


風使いちゃんが戻ってきた。


「待った?」


「いえ」


新人ちゃんは、小さく首を振った。


「あ、ちょうどよかった!」


「お待たせしましたー。ハンバーグ定食二つ」


運ばれてきた。


湯気の立つ、丸い肉の塊。

照り焼きソースが艶やかに光っている。


新人ちゃんは、それをじっと見つめた。


動かない。

ただ、見ている。


「...これが、ハンバーグ、ですか」


「そう!見て、このツヤ!この香り!最高でしょ!」


風使いちゃんは、既にフォークを握っている。


「じゃ、いただきまーす!」


「...いただきます」


新人ちゃんは、恐る恐るフォークとナイフを手に取った。


ーー


ハンバーグを、切る。


肉汁が、じわりと滲み出る。


フォークに刺して、口に運ぶ。


新人ちゃんの手が、少し震えていた。


口に、入れる。


ーー


新人ちゃんの目が、大きく見開かれた。


じっと、動かない。

フォークを口元で止めたまま。


咀嚼する。

ゆっくりと。


そして。


「...っ」


新人ちゃんの目が、潤んだ。


「新人ちゃん?どうしたの?大丈夫?」


風使いちゃんが心配そうに覗き込む。


「...いえ」


新人ちゃんは、小さく首を振った。


「おいしくて」


「でしょ!泣くほど美味しいよね!わかるー!私も初めて食べた時、感動したもん!」


「...はい」


新人ちゃんは、もう一度小さく頷いて、

静かに、もう一口、ハンバーグを口に運んだ。


ーー


二人は、ゆっくりとハンバーグを食べ進める。


風使いちゃんは、あっという間に半分食べてしまった。

新人ちゃんは、一口一口を大切に、時間をかけて食べている。


その様子を、風使いちゃんは微笑ましそうに見ていた。


「ね、新人ちゃん」


「はい」


「今度、一緒にダンジョン行こうよ!」


新人ちゃんは、少し考える。


「...はい。ご一緒させてください」


「やった!じゃあ明日行こうね!」


「...」


新人ちゃんは、風使いちゃんを見つめた。


「...なぜ、そんなに喜んでくれるんですか?」


「え?」


風使いちゃんは、きょとんとした顔になる。


「だって、友達が増えるの嬉しいじゃん」


「友達...」


新人ちゃんは、その言葉を繰り返す。

まるで、初めて聞く言葉のように。


風使いちゃんは、少し首を傾げる。


「友達って言葉、変だった?」


「いえ...」


新人ちゃんは、小さく笑った。


「...はい。私も、嬉しいです」


その笑顔は、さっきまでとは少し違っていた。

少しだけ、柔らかい。


「よかった!じゃあ明日も一緒に行こうね!」


「はい」


二人は、再び食事に戻る。


風使いちゃんは、もう完食しそうな勢い。

新人ちゃんは、まだ半分も食べていない。


「お代わり頼んでいい?」


風使いちゃんが聞く。


「...私のも、食べますか?」


新人ちゃんは、自分の皿を風使いちゃんの方へ押した。


「え!いいの!?」


「はい...少し、お腹がいっぱいで」


「やった!新人ちゃん、大好き!」


風使いちゃんは、嬉しそうに新人ちゃんのハンバーグに手を伸ばす。


新人ちゃんは、その様子を静かに見ていたがぽつりと言葉が漏れる。


「ハンバーグは、おいしい」


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