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ハンバーグはハンバーグ  作者: 風待望
真祖さん

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10/12

数千年の目覚め

その扉が最後に開かれたのがいつのことか、もはや知る者はいない。 内側に満ちているのは光の一粒すらも許さぬ純然たる闇。 循環という概念を失った絶対的な停滞と幾層にも積み重なった忘却の灰が地面を覆い隠し世界の巡りから切り離していた。


生者の足跡が途絶えた真なる未踏の地。 理ことわりさえも腐り落ちるような深淵の底。 真なる夜の王が眠ると謳われたその静謐を侵す者は後にも先にも現れぬはずであった。 悠久の眠りを守るべくかつて神々が施したとされる七重の封印。その最奥には天界の輝きすら届かぬ絶望的なまでの闇が存在していた。


封印が、解けた。


封印により停滞していた空間に新しい風が入ってきた。


存在を覆い隠していた塵もその風によって取り払われた。


自己を認識し現状の確認をする。


(…誰か、いる)


少女の声が聞こえる。


(…出られる)


体が動く。


次の瞬間。


魔力が、吸い取られ始めた。


(...え)


凄まじい速度で。


(ちょ、ちょっと待っ)


「グェ~」


思わず、変な声が出た。


(...今の、私...?)


数千年ぶりに出した声が、

「グェ~」。


(...恥ずかしい)


でも、それどころじゃない。


魔力が、どんどん吸い取られていく。


私は、真祖。

魔力の量は、桁違い。

この吸収量ならいくら吸われても影響はほとんど無い。


とりあえず少し様子を見るも止まる様子が見えない。


(もしかして止まらない?)


少し不安になったが数分後。


「キィィィィン...」


と言う音が鳴ったと思ったら止まった。


(...助かった)


私は、ぐったりとしていた。


別に力を失ったわけじゃない。

ただ、急激に吸い取られて、疲れただけ。


(...なんだったの、今の)


吸収が止まったので起きようと思いふと気づく。


(…さっきの声を聞かれてたら恥ずかしすぎる)


私は、そのまま二度寝を決め込むことを決めた。


五度寝から目覚めた私はそろそろ棺から出ることを決めた。


「…ここはどこ?」


どうやら魔物の体内ではあると言うことはわかるが誰かが飼っている可能性が高い以上危害を加えるわけにもいかない。結果として私はこのダンジョンと化した魔物の体内を当てもなく彷徨うことになるのだった。


どれくらい歩いただろうか。扉を抜けると大きな部屋に出た。


大きな部屋に出ると、そこには多くの人間が集まっていた。 皆、武器を持ち、酒を飲み、笑い合っている。


(……この魔物、お腹の中に街を飼ってるの?)


なんて器の大きな魔物なのだろう。私は感心しながら、その広場を観察することにした。 その後手持ち無沙汰になり壁際のベンチに座っていると、一人の親切そうな男性が声をかけてくれた。


「あの、新人さんですか?」


新参者という意味だろうか。私はとりあえず頷いて、彼が語る「うわさ話」に耳を傾けた。 どうやら、この場所には「数千年も生きている、かつて暴れまわっていた恐ろしい魔物の親玉」が、受付嬢のふりをして潜んでいるらしい。


(怖い……。そんな恐ろしい人が近くにいるの?)


私は震えた。数千年ぶりに起きたばかりで、変な声(グェ~)を出して五度寝していたような私に、そんな好戦的な上位存在と戦えるはずがない。


(目立たないようにしよう。私はただの、か弱い新人……ただの新人だから……)


そう自分に言い聞かせ、私はあの「恐ろしい魔物の親玉」がいるという窓口へと恐る恐る視線を送った。


そこには、確かにいた。 退屈そうに頬杖をつきながらも、眼光鋭く、魔力を完璧に隠蔽しきった状態でこちらが近づく前から不自然なほどに私を凝視している「彼女」が。


(……目が合っちゃった。どうしよう、食べられる?)


逃げたいと考えたがどうやらこれから「恐ろしい魔物の親玉」との面通しが始まるらしい。


私は必死に、その時間が来るのが出来るだけ遅れるように親切な探索者のうわさ話が終わらないように必死に相槌を打つのだった

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