3:新しいローブ
深夜正午。宿泊する宿屋の屋根に、ヤモリのように何とかよじ登った。
「フゥー、ここなら誰にも見られないでしょ」
この街に移り住んで二週間だが。賢者程度の魔法使いも居ないこの街で、魔法少女であることがバレては何かと都合が悪い。
さっさと終わらせねば……。
だけど今日は何にしようかな~~。そうだ!
「月夜の聖霊よ。わが問いかけに応え、その力の鱗片を――救える者の癒しにせよ! 『月光』!!!」
魔法少女『月光ver』に変身。
衣装はいつも通りだが、月光色になった可愛い衣装は気分が上がる。
クエストの依頼者からもらった、カナリアのぴーちゃんの抜け落ちた羽を手に――――。
「主のもとに我を導きたまえ。ぴーちゃんの羽!」
通常――主であるぴーちゃんが天国へとすでに他界していた場合は何も反応しないのだが。
羽は光り、意思を持ったように手のひらから浮き上がった。
「案内してちょうだい!」
勢い良く飛び出す羽――――。
「待ってろ――――ッ、新しいローブ代!!」
トンッと屋根を蹴り、飛び出した羽を追うのだった。
ーーーーー
「ありがとうございやした――――ッ。またのお越し、お待ちしております!」
……。
バニラクリーム色の可愛いローブがホントは良かったのに……トホホ。
入店早々、粘着接客を受けた私は……。
オススメされた地味なオリーブ色のローブを買う羽目となってしまった。
ああいう時に『結構です! 自分たちで選べますから!』と言ってくれる仲間がいれば……。
地味な見た目も改善され、『私とパーティ組んでください!』と言われる……いや、そう言われる時点で仲間いるじゃん……ぐはっ。
自らのツッコミに心理的ダメージを負い、回復をベンチに座って待っている時だった。
「そのローブ……。もしかしてあなた、あのクエストをもう終わらせたの?」
昨日の盗賊っぽい人が話しかけてきた。
「あ……はぃ?」
「ねぇ! どうやって見つけ出したの?? それにカナリアって、飼い主以外には死の呪いをかけるんでしょ?! 大丈夫なのあなた??」
昨日、会った時もそうだが何て会話のテンポが速い人だ……それに人見知りしないって鋼メンタルか。
「あ……まぁ、なんとか」
たぶん、こういう人と店に行ってたらバニラクリーム色のローブを着れていたんだろうな。
そんなことを内心思いながらも、彼女は続ける。
「良いなぁ、そのローブ狙ってたのよ! ほら、わたし見ての通り盗賊だから、身を隠せる色合いのローブを探してたのよ~」
本当に残念そうに悔しがっている。
私なんかがすみません、文句はお店の人に……。
「着て、みます……?」
なぜそんなことを聞いたのか自分でもびっくりだ。
たぶんだが、自分よりも彼女が着た方が似合うと思ったからかもしれない。
「どうどう? 似合う?」
「そう……ですね」
私が羽織ると、ふた粒しか入っていないそら豆みたいなのに……。彼女が羽織るとアスパラガスのようだ。
同じ野菜といえど、そのオシャレ度数は雲泥の差。
何度もふわりふわりとローブをひらめかせる彼女に、提案をしてみることにした。
「実はですね……」
「なになに?!」
美人さんに提案するのもおこがましいが、これ以上のチャンスは中々やってくるものではない――――。
そして……。
私の提案は通り。バニラクリーム色のローブを彼女が買い、交換という形で手に入れることができた。
値段は私が買ったローブの半額程度だが、値段ではないのだ。
これで私の地味な見た目も改善され、『私とパーティ組んでください!』と言われる日も近いかもしれない……。
そう思わずにはいられなかった。




